夢の足跡

□2009.10.30.
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彼氏の家を訪ねて行って

いきなり黒いマントとオレンジ色のかぼちゃ頭が出てきたらどうしますか?








「はっぴーはろうぃーん」






もちろん、驚きはしたけど。


でも、いや、声は確かにけんちゃんだし
それに思っきし平仮名だし。




「あ…あ、どうも」



咄嗟にどう反応していいのか迷って間抜けな挨拶をしてしまったあたしに




「……それ、風邪のひとの仮装?」




やっぱりけんちゃんの声で話しかけてくるかぼちゃ頭。




え?仮装?




…ああ、あたしのこのマスクのことか。



呆気にとられ過ぎていたあたしは
それが分かるまで十数秒はかかったように思う。




最近、外出時には着けるようにしてるんだけど
あたしのマスク姿が珍しかったのか、不思議そうに覗き込んでくる。
覗き込んでくるっつっても、どこから見えているのかも分からないんだけど。


マスク、いつもは部屋に入る前には外してるもんね。




「ううん、違うよ、風邪予…」



「えっ!?だいじょうぶ?熱あるの?」



もう、早とちり。



「違う違う、予防。あたしが風邪ひいてけんちゃんにうつしたりしたら大変だからねー」



そんな格好なのに
きゅうに素に戻って心配してくれるけんちゃんがおかしくて
思わず吹き出してしまった。



「なーんだ…よかった」



風邪じゃないとわかってホッとしてくれたのはいいけど
相変わらずのかぼちゃ頭。

はやくいつものふにゃっとした笑顔を見せてほしい。



「で、けんちゃんは何でそんなカッコしてんの?」



「へ?…いやいやいや、かぼちゃと云えばハロウィンやんか」



「そうだけど…え、今日だっけ?」



ようやく冷静になってきた頭で”ハロウィン”って言葉を考えてみた。
ハロウィン、それはけんちゃんのメンバーのあの人が大好きなイベントのひとつ。


だけどけんちゃんにはそんなに馴染みは無く
去年も特になにもしなかったのに。
今年はなんの風の吹き回し?



「そうやで〜。だから、今年はいろいろ用意してやな…」



でも気まぐれなけんちゃんのことだから
こういうことももう慣れっこだけどね。




「あー、わかった!お菓子くれなきゃHないたずらするとか言うんでしょ」



どうせけんちゃんの事だし、なんて思ったから
そう言ってやったら急に肩を落としたかぼちゃ君。




「…先に…言われた…」




目の前で大きな身体を前に屈めて項垂れて
しょんぼりして見せるかぼちゃ君。



そんなポーズをとられると
幾つになっても変わらないけんちゃんが不思議で、面白くて
たまらなく愛しくもなって。



そこでふと去年のけんちゃんの話を思い出した。
ここで冷たくあしらったりして
ハロウィンパーティーに誰も付き合ってくれなかったとか言われちゃ困るし。



ああ、ほんと、そういうとこずるいなぁ。


けんちゃん本人は、都合の悪いことは全部綺麗に忘れるくせにね。




それにしてもこの格好で
どれくらい待ってたんだろう、と思うと
付き合わざるを得ない。



そっとかぼちゃ頭を脱がせ
やっと出てきた、今日初めて見るけんちゃんの瞳は
しょんぼりどころか悪戯っ子の輝きに満ちていて。




それを見て観念したように
ため息を漏らしたあたしが口にしたのは




「で、あたしは何着ればいいの?」




それは”一緒に遊ぼ”って合図。




すると、悪戯っ子の顔が
途端にぱぁっと明るくなった。




そう、これが見たいんだからしょうがない。




にやにやしながらメイドさんの衣装を持ってるけんちゃんを見た瞬間
やっぱり、ちょっとだけげんなりしたのは事実だけど




いいよ、そんなけんちゃんが大好きだから。




これからもうーんと甘やかしてあげるから



甘いお菓子なんかよりキスを
ずっと、いっぱいちょうだいね







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胸焼けしそうです(甘い物苦手)

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