夢の足跡

□2010.12.〜
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ごそごそごそ、もそもそ





それは深夜早朝を問わず起きる現象。






「……ん」





ずっしりと加わった重みで意識を呼び戻される。




「…重…」





重みの正体がけんちゃんなのはわかってる。
眉を顰めながらうっすら目を開けると
薄暗い中に、少し目じりの下げた優しい目で私を見下ろしてるのがぼんやりと確認できた。



もう次に何がくるのかも知っている。


顔中に降りてくるキスの雨だ。




「……」




まただ…と思いながら無言で受け入れるのはいいけど
その手が意図を持ったように動き始めると
少々困ったことになる。




「んっ、ちょっと…やだ」





唇が首筋を辿りはじめ、片手が脇腹からするりと入り込む。

やわやわと胸を揉まれ思わず声を出す私なんかまるきり無視でけんちゃんの手は蠢く。




寝起きの動きの鈍い手で抵抗を試みても虚しく
器用に動く手にただ玩ばれる。




いつもならここまでする事は滅多にない。
まあ過去に何度かは最後まで…なんてこともあるにはあったけど。




でも大半は。



中心を刺激され
腰から背筋にかけて甘い痺れが走りだし
こっちがすっかりその気になったあたりで



けんちゃんはピタリと動きを止めて寝てしまうのだ。



しかも上に乗ったままいきなり全体重をかけて。






”うっ…おっ、重いっ”





起きてる時は上にいてももちろん体重をかけないように気を遣ってくれるけど
寝惚けてるからそんな配慮があるはずもない。




中途半端で放置された上に
図体のでっかいけんちゃんを退けるという力仕事をさせられて
こっちはすっかり目が覚めてしまうというのに
退けられたけんちゃんは高いびき。





初めの頃は寝惚けていても求めてくれることが嬉しかったりもして
次の日に”触ってたの覚えてる?”くらい言ったことはあるけど
特に”いやだ”と主張したことはなかった。



でもこう何度もあるとちょっと、、色んな意味で、つらい。



翌朝いくら訴えても
本人は全く覚えてないから腹がたつというもの。

















「だから眠れないしヤだって言ってんの」




「そんなことしてないって〜」





その日の朝も案の定認めようとしないけんちゃんに
しつこく”してるよ!”と詰め寄ったのが間違いだった。







”おれそんなに寝惚けたりするかなー?”とかなんとか言いながら
どうするかと思えば。




首を傾げながら右手を見つめたあと、指を鼻先へ持っていき…


くんくん。







うそ!


匂い嗅ぐなんて…最低っ!!!





「ばっ、ばかっ!」



「…あー、ほんまや、したかもー」





やだ!”したかも”ってなに!におうの!?うそやめてーっ!




慌てふためきながらけんちゃんの右手を鼻からひっぺがそうと
手を伸ばした拍子にあっさり抱きとめられ
腕の中へすっぽり収まった私。

けんちゃんは”嗅いでみる?”とばかりに右手を差し出しにやりと笑った。




「じゃーいまから照合させてもらおー」



「照合って…なんの!?」



「ん?このにおいと一致するか」






満面の笑みのけんちゃんに朝っぱらから襲われながら

”けんちゃんには言うだけ無駄、むしろ言うと最悪”






というのを身を持って知り、少しだけ投げやりになった私を見て
けんちゃんはまた笑った。







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「お風呂に入っても石鹸は使うな」
なんて…そんなマニアな発言されてもw

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