楽園

□Get a whiff of
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「暑いねー」


「そりゃまだ夏やからねー」






おれたちはこの炎天下の中
座れる場所を探しながら、堤防に沿って歩いていた。


思い付きで朝飯も食わずにこんなとこまで来ちゃったけど
途中でお弁当はちゃんと買った。
少し足をのばしてやってきたのは海。


岩場が多いせいかひと気はほとんどない。
ちょっと離れた場所の一際大きく突き出た岩影あたりに1人、
そこから伸びる堤防の先らへんに1人、お年寄りらしき姿が見えるくらい。



ここなら安心。





「あ、あのおばあさんもお弁当食べてるね」



促されて目を凝らすと、確かに今向かってる方向の日陰に誰か座ってるように見えた。



「目ぇええなー、おれ誰かおるーってくらいしか見えへん」

「見えない?じゃああの堤防の先でおじいさんが釣りしてるのも見えない?」

「うそ、釣りしてんの?何釣れるんかな。ええなー、おれも釣りしたいー!」



そんなお年寄りを遠目に見ながら、同じ日陰に向かってゆっくり歩く。




それにしても暑い。


そりゃ泳げもせんのに暑いさなかこんなとこ来るやつもそうおらんやろなぁ。





目の前にはどこまでも広がる大きな空と海。
遠くにはいかにも夏って感じの真っ白い入道雲。




最近プロモーション活動で人込みにばっかりいたから
こういう広いところに来るのはゴルフ以来?
それに久しぶりのデートだし、おれはかなり気分爽快。でも、だけど。



やっぱり暑すぎる!



また日焼けしてメイクさんに怒られるかなぁとか
こんな暑さに付き合わせちゃって、彼女にもちょっと申し訳なく思ったりもする。

けど隣を歩く彼女の口からずっと鼻歌が聴こえてるってことは
そんな嫌がられてないってことやんな?
そう思うだけで気分が10倍くらい跳ね上がってこの暑さすらどうでもよくなってくる。
やっぱりおれって単純。









で、なんでこんなとこに居るかっていうと……





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