楽園

□That infatuation
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夕食の後片付けもおわり
あたしがお風呂に入ってる間に
けんちゃんはまたツイッターに夢中になっていた。


出てきたのも気づかず、時折ふふっと笑ったりしながら
カタカタ文字を打ち続けている彼の傍らに歩み寄り、しばしそれを見つめる。




「……ね、楽しい?」




気づいてもらえなさそうだったからこちらから声をかけてみると
けんちゃんは微かに、だけど確かにびくっとなった。




「あれ!?いつ出てきたん?」

「さっき」

「見てたんなら言うてよー」




少し慌てたようにノートの蓋を閉じながら
どこかはぐらかすような笑い方をするけんちゃん。

ていうか、別に抜き足差し足で忍び寄ったわけじゃあるまいし
気づかないほど夢中になってたのはそっちのほうですけど。

そう思ってなんとなく少しだけ唇を尖らせた。




「あたしにも見せて」

「あかんよー、これはファンとおれとの楽しみなんやから」

「…いいもん、あたしもアカウント持ってるし…フォローしてんだからね」

「まじで!?」

「うん、一回話しかけたらスルーされた」

「うっ、うそやん!なに、いつ!?」




円らな目を見開いてぱしぱし瞬きをしたけんちゃんに
ますます尖るあたしの唇。




「…うそだけど、そんな慌てなくても」




すっかりツイッターが日課となった彼は
今までのネットと無縁の生活が嘘のよう。


楽しそうだし別に気にもしてなかったけど
活動が再開されてただでさえめったにない二人の時間にも

こうして隙を見てはPCを開かれると
ちょっと、なんだかねぇ。







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