桜吹雪



「清寿っ!」
「…何?」

全く視線を合わせず返事をする彼に少々怒りを覚えつつも話しを続ける。

「笑太君が買い出しに行けって…私と清寿で。」
「ヤダ。」

(即答かよ)

「でも私だけじゃ大変なんだ〜行こうよ!」
「僕はヤダって言ったよ。」

そう言うと、背を向け歩いていく。

「清寿のバカー!!」

廊下にこだまする叫び声は虚空へと消えていった。


インスタントコーヒー、お菓子、おにぎり等を大量に買い本部までの道を歩く。

「重っ…。」

特刑といえども、やはり女の子。
あまり力が無い。
大量の荷物にため息をついたのが悪かったのか、見事に転んだ。

「痛い。疲れた。最悪。」

愚痴を零し、座りこんだ場所は綺麗な桜並木。

「今の私に桜は似合わないなぁ…。」

擦りむいた腕や膝に目をやる。

青い空に映える薄い桃色はあまりに綺麗で…。
それに比べて私は惨め。
いつの間にか涙が頬を伝う。

「…好きだよ、清寿。」

彼女が呟くと同時に、ざぁっと風が吹き、桜が舞い散る。

「今の本当?」

桜吹雪の中から現れた清寿に驚き目を見開く。

「今、僕のこと好きって言ったよね?」

半信半疑とでも言いた気に眉を潜め問う。

「な、何でそんなこと聞くの?」
「僕はキミが好きなんだ。」

答えた彼はしゃがみ込み視線を合わせる。
真っ直ぐで曇りの無い瞳。

「好き…です。」

小さくか細い声。

「じゃ、ついでに僕のお嫁さんになる?」

上機嫌に笑う清寿は荷物を軽々持ち上げ、私へ手を差し出した。


end


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