□残り香
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究極の闇のゲームは終わりを告げ。
ファラオは勝ち残った。
対する者は闇に消えてしまい、ファラオは残酷だと考えがちだけど、そんなことはファラオが誰よりも強く感じているだろう。
でも、きっとボクはファラオを憎まずにはいられないだろう。
大切なものを奪ったのだから。


心の中、すみっこにうずくまるものにボクは近寄る。
黒いコートも黒い翼も見慣れないけど、白い髪で人物は特定できるものだとボクは初めて気付いた。

「…残念だよ」

やがて、小さく紡がれた言葉。
ボクは静かに耳を傾ける。
きっと、これは、遺言のようなものだろう。実際、彼はすぐに消えてしまう。

「おまえを、永遠の宿主と決めたのにな」

自嘲的に笑みを浮かべたバクラはただ消え入るように言葉を紡いでいく。
ボクは何も言わない。
それより、残る側として彼の言葉を記憶に刻み付けなければいけない。

「三千年間、ずっと耐えてこの場にいるっていうのに、こんな最期とは…
 全く、結局は無駄足だったな」

あーあ、とバクラはため息をついて壁に深くよしかかる。
…その身体が、若干、透けて見えた。

「でも、ボクは、おまえと出逢えた」

気が付けば口が勝手に動いていた。
バクラは少し驚いたような顔をして、「そうだな」と笑う。

「オレ様も、宿主と逢えて幸せだよ」

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