創作戦国

□手合わせ
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とん、と軽い足取りで間合いを詰める。
槍はリーチが長いが、その分接近されると弱くなる。いつだったか又兵衛がそんなことをぼやいていた気がする。
まあ多分、こいつがそんなことをわかっていない訳がないが。
手にした羽扇を力任せに振り下ろした。
案の定それは槍の柄で防がれる。がっ、と固い物をぶつけ合う音がした。
すぐさまもう片方の羽扇を片手で展開し、隙のある脇に狙いを定める。それも後ろに跳んで避けられた。それどころかそのまま槍を横薙ぎに振るってきたのだから焦ったものである。

「っわ、」

慌ててしゃがんでそれを避ける。髪の先が数本切れたような気がして冷や汗をかく。
今度はこっちの番だと言わんばかりに槍が突き出されるが、それは横に避ける。
戦闘力はあちらの方が上だが、身軽さは誰にも(少なくとも黒田家の中では)負けない自信があった。
突き、薙ぎ、限られる槍の戦闘動作を最大限に活用する彼も素晴らしいが、それを全て軽々と避ける自分も凄いと自画自賛する。
先程にも書いたように、槍はリーチが長いので後ろに跳んではその後が避けられない。
のでとりあえず横に跳んで反撃を試みるが、中々その機会は訪れない。得物を振るってはみるがどれもこれも寸での所で防がれてしまう。我が義弟ながら化け物か。
がんがんと得物同士を打ち付ける音が青空の下響く。やけに静かなのはみんな見入っているからか?


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