創作戦国

□無自覚兵器
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「善左衛門」
「……」

今にも自ら発光しそうな程の笑顔を浮かべている久作に、善左衛門は反応を返せない。
鼻腔を貫く表現しがたい刺激臭に耐えるのがやっとである。

「僕が鮭を焼いてみたよ!」

どう?と瞳を輝かせる久作の手に握られた鍋から呻き声が聞こえる(この世のものではなかったので恐らく物ノ怪の類だ)。
色のはっきりしない紫陽花のような色をした気体(なのだろうか)が辺りに充満していた。
うっすらと見える怨霊のようなものが悍ましい形相でこちらを睨んでいる。おそらく鮭の怒りに違いない。
周囲から人の気配がなくなったのを考えると、皆避難してしまったようだ。この状況を打破できるのはもはや善左衛門しかいないのである。
重い運命を背負わされた勇者の気持ちを善左衛門はこの場で初めて感じることとなった。

「……重矩、様…?」
「善左衛門味見してみて」

討死。人生とは何と呆気ないものか。

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