その他
□カナリア
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「覚えてるか?」
重い声。
たった一言なのに、自分を攻め立てるようなトーンに、クロウは思わず後ずさりする。
自分を見つめる金。
黒によく映えたそれはまるで月夜に浮かぶ月のようだった。
それから視線を逸らしたくて仕方ないのに。
逸らせなかった。まるで金縛りにあったみたいに。
「……何、を」
「それも聞かなきゃわかんねえか?」
鬼柳が口端を持ち上げた。
お前は昔から変わんねえなぁ、とケラケラ笑う声を聞き、クロウは少しずつ湧き上がる恐怖を唇を噛んでやり過ごす。
逃げてはならない。逃げてはならない。
彼は鬼柳だから。
かつて、自分がついていくと決めた、。
「お前は、オレについてくると決めたんだろ?」
「…お前から離れていったんだろうが。オレたちが届かないところまで、勝手に、…勝手に、壊れていったんだろうが!」
感情に任せて、鬼柳に怒りをぶつける。
こいつが勝手に壊れてしまったから、自分たちは彼についていけなくなってしまった。
そうなのだと、クロウは自分に言い聞かせる。鬼柳が悪いのだ。
鬼柳は気味の悪い笑みを浮かべたまま、何も言わない。
楽しそうだった。
それはそれは、子供が新しい遊び方を発見したかのような。
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