その他

□スウィートスカー
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*ヒューバートがストラタに行った後くらいの話





「だから無理はするな、と言ったじゃないですか」

そうですね、すみません。なんて。
そんな言葉が簡単に出てくる筈がないこの口は沈黙を保つ。視線も気まずそうに明後日の方を見るだけだ。
そんなレイモンを見て、バリーはやれやれと肩を竦める。彼にはまだ慣れそうにない。
シェリアを人質に、ヒューバートの邪魔をしようとしたレイモンは、バリーにとって敵という対象にしかならない。
それでも放っておけないのは、生死の境を彷徨った後の彼は、どこか雰囲気が変わったように思えるからだろうか。
少なくとも、以前のような刺々しさは無くなっている気がする。だからこそこうして無防備に介抱している自分がいる。

「"安静にしていれば"、とシェリアも言っていたでしょう」
「……」
「どうして大人しく寝ていないんです」

何があったか、と言えば簡単な話。
ウィンドル兵が去った今、人々は総出でラントの復興に力を入れていた。ヒューバートが去った後ラントを任されたレイモンも、街の復興作業を手伝っている。
しかしその作業中にうっかり刺した腹の傷口が開いたようで、再びベッドの中、という訳である。レイモンにとってはこれ以上屈辱的なことはない(…いや、あるかもしれない)。

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