BASARA

□ガラクタの心
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そこには、自分の望むものがあった。
手を伸ばす。あと、少しで届きそうで、届かない。
細い指の先からするすると抜け、離れてしまう。

そこで、ふと思った。
それは、果たして自分が本当に望むものなのだろうか?



半兵衛は恐怖に、小さく身体を震わせる。
馬鹿馬鹿しい。そんなこと、あるわけないのに。
そう思うのに、考えれば考えるほど不安は大きく募っていく。
無意識に、白い着物の裾を掴んでいた。


秀吉が、自分を求めた。
この愚かな乱世を終わらせるには、自分が必要なのだと。
主を捨て、生きがいも捨て、ただ稲葉山で時が流れるままに過ごしていた自分を、秀吉は求めた。
伸ばされた手を、自分は握り返した。

だからこそ、怖くなった。
既に、自軍は他勢力より数倍もの兵力を持っている。
果たして、彼は、本当に自分を必要とし続けてくれるのだろうか。

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