BASARA
□亀裂
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どうしてこんなことになってしまったのだろう。
いつからこんな関係になってしまったのだろう。
いくら問いかけても分かるはずはない。
答えは既に、過去に流されてしまっている。
襟首をつかまれ、稲葉山城の壁に押さえつけられた。
身体を打った痛みに、半兵衛は顔を顰める。
押さえつける張本人が、半兵衛に顔を近づけた。
「半兵衛」
「…慶次君、」
目の前にある慶次の表情は今までに見たことない程、怒りに満ちていた。
理由は、言うまでも無く。
半兵衛は自分を睨みつける瞳に臆することなく、冷静に慶次の顔を見上げる。
「どうして、秀吉を止めなかった」
何度も繰り返される質問に、半兵衛は小さく舌打ちをする。
もう何年も前の話。まだ、こいつは過去に縋っているのか。
胸倉を掴む腕に、自らの手を添える。
慶次を見上げる瞳は鋭く、冷酷に。
「……まだそんなことを言っているのか君は」
「…半兵衛…!」
「だから君はいつまで経っても子供なんだよ」
慶次の腕に力が込められる。
だがどれだけの怒りを募らせようとも、慶次は彼を殺すことはないことは半兵衛はわかっていた。
彼は無駄な殺生は好まない。相手が誰であっても。
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