BASARA

□望む人形
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目的の人物は、人取橋の最奥で佇んでいた。

「……ああ、卿かね」

やれやれと待ちくたびれた様子で松永久秀は笑う。その後ろで、捕らえられた兵が喚いた。
半兵衛は荒ぶる様子もなく、静かに松永に近づいていく。
その瞳に、静かな怒りを秘めながら。

「…貴方が、松永殿かい」
「無論」
「無傷で兵を解放したまえ。豊臣の兵に手を出した罰は、貴方の死で償ってもらう」

半兵衛様、と兵が嬉しそうな、だが心配そうに声を上げる。
松永は半兵衛をチラリと見、低い笑い声を上げた。
それが癇に障った半兵衛が舌打ちをする。
無表情に、不愉快の色が浮かんだ。

「…何がおかしい」
「失敬。卿の心が、私にはよくわからなくてね」

松永が半兵衛を見つめる。
その瞳に何か嫌なものを感じ、半兵衛はハッとして身構えた。
松永がニヤリと笑う。その笑みからは余裕、といったものしか感じられなかった。

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