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□なきむし
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怖かった。


そう呟いた声が、ファルコの耳に届く。
思わずルイージを見る。
いつもの彼らしい、明るい表情は見当たらない。空を映したような蒼の瞳が弱々しく伏せられている。

「…あ?」
「……怖、かった」

ついぶっきらぼうに返してしまったが、ルイージの表情はよくも悪くもそんなに変化はない。
自分を抱くように腕を掴んでいる手に、力が込められる。

彼らしくない。
ファルコは他人に対して鋭い方ではないが、いつものルイージと様子が違うことにすぐ気付いた。
彼が、こんなに怯えた様子を見せたことが、果たしてあっただろうか。


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