BASARA

□亀裂
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「俺は…!人の心を踏みにじって進むお前らが、…お前らを止めたいんだよ!何で、お前が秀吉を止めなかったんだ!」
「…何度言わせるつもりだい?"まだそんなことを言っているのか君は"」

感情的な慶次に対して冷徹な言葉を返す半兵衛は、その腕をやや乱暴に振り払った。
意外にもその腕は簡単に解けた。

「僕に出会う前の秀吉を、僕は知らない。だが、彼の語った夢は僕の憂いそのものだ。それを、止めるわけがないだろう」
「人の心を捨てた軍に国を作れるわけがねえ!」
「できるさ、秀吉なら」

ぐ、と慶次が言葉に詰まる。
半兵衛は無表情に慶次を見つめる。
慶次は、唇を噛み締めて俯いた。

「…なんで、こんなことになっちまったんだよ」
「……」
「あの時、4人でいたとき、何もかもが楽しかったのに。毎日が幸せだった。それなのに、何で、」

こんなことに。

静かな山奥に、切なげに慶次の言葉が響く。
半兵衛の脳裏に、過去が浮かぶ。
自分と秀吉、慶次、そしてもう一人。
それらを振り払うように半兵衛は首を振る。
あの時、過去は捨てたのだ。秀吉が彼女を殺め、過去と決別したときと同時に。

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