短編小説

□still...
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「す……ごい………。」


リーダーの言う“いいところ”ってのを、正直俺は期待してなかった。

この辺で“いいところ”なんて場所はたかがしれてるだろうと…。


でも、そんな俺の予想は大きくはずれる。


「なっ!すごいだろ!!」

「…すごいよ……リーダー…」


大きな1本の樹が、そこには立っていた。


大きく、壮大で…

かつ、美しく…


「…俺、子供ん時からここで絵描いたりしてんだ。」

「…いいですね。雰囲気も…」


2人の笑顔が夕日に染まる。


夕暮れ時の“ここ”には俺たち以外に人影はなかった。


「…久しぶりに来たぁーー」


リーダーは大きく伸びをすると、樹の下に寄りかかって座る。


「……ふふ。」


俺もその横に寄り添って座った。

都会の騒がしい音は一切聞こえず、静まり返っている。


ふわりと優しい気持ちが過ぎると

急に甘えたくなり、リーダーの肩に頭を預けた。


「…俺、ニノにしか言ってないんだよ。」

「え…?」


俺の頭の上に自分の頭を乗せながら、リーダーは話し始める。


「この場所…綺麗だからさ…。ニノ以外に教えたくないんだよ。」

「……大野さん…」


俺とリーダーだけの“秘密”


誰にも言わない。

言いたくない。


「……大丈夫。俺…誰にも言わないから…。」

「…うん。俺とニノだけの秘密な?」


俺たちだけの空間。

2人だけの世界。


これからもっと、こんな秘密が増えていけばいいのにな…


「……静かだな。」

「…そうですね……。」


大きな大きな、樹の下の

小さな小さな、俺の望み


「ニノ……」

「…何ですか??」

「………」

「……っ!」





でも、小さい望みだけじゃ収まらない。





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