Novel
□妃芽様より
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「あ、雨か…」
ふと窓の外に目を向ければ、音も無く空から雫が落ちていた。
傾いだ窓を開け、雨粒に手を伸ばすギルバート。だが、それは彼の手に落ちたかと思った瞬間、砕け散った様に零れて行く。
(…まるで、オレ達みたいだな)
さしずめ、雨粒がオズと言った所か。そこまで考えると、ギルバートは半ば自嘲気味に肩を揺らしながら笑い声を上げた。
「ギル?何、外を見ながら笑ってんの?」
後ろから、訝しげにオズが話し掛ける。確かに、ギルバートの行動は周りから見たら不審極まりない。
「いや、なんでもない」
「ホントに〜?なーんか怪しいなぁ…」
言いながら近付くオズ。
ギルバートは、勘ぐられ無い様に振る舞うも尚更に怪しさを滲ませる。
「な、なんだよ…?」
「なんでもないよっ」
子猫を連想させる仕草で音も無くギルバートの懐に飛び込んだ。その後は、文字通り子猫の如くゴロゴロと従者に甘え続けた。
こうなってしまえば、後はなすがまま。余りの愛苦しさにギルバートは白旗をあげざるを無かった…。