短編
□言葉にして
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「あ、リヴァイさんおかえりなさい!」
ガチャリと玄関が開く音がして、入って来たのは私の大好きな旦那様、リヴァイさん。
「あぁ、ただいま。」
「今日は、ご飯にします?お風呂にします?それとも」
「風呂。」
「ですよね!了解しました!」
私は毎日の様にリヴァイさんに問いかけるのだが、返事はいつも決まって「風呂」である。
しかも、私の言葉を遮って。
潔癖な彼が、仕事で汚れた体を真っ先に綺麗にしたい気持ちは、私だって分かってる。
だけど、こうも毎回だとさすがにへこむ。
「リヴァイさん、タオルここに置いておきますね!」
「あぁ。」
付き合っている時は、結構お互いにお互いを求め合っていて充実していた。
だけど結婚をして、毎日一緒に過ごす様になってからは、甘いムードになることなんて滅多になくなった。
「あぁ、これがマンネリというものなのかな。」
最近、熟年離婚が流行っているけど、あれもきっとマンネリ化した日常が原因になっているんだと思う。
「まぁ、このままいったら私達は若年離婚しちゃうかな。」
リヴァイさんが好きなビーフシチューをお皿に分けながら、私は1人虚しく笑った。
前々からリヴァイさんが考えていることは、よく分からない。
今もたまに何を考えているのか分からない時がある。
「これって、夫婦でいる意味あるのかな?」
私は2人分の食事の用意を済ませると、先に椅子に座ってリヴァイさんを待つ。
テレビをぼーっと見ながら、珍しく思考がネガティブになる私。
「……おい、どうした。」
「っ……!?」
するといつの間にかお風呂から上がってきたリヴァイさんに声をかけられ、私は肩を思い切りびくつかせてしまった。
「い、いえ。別に、」
「そうか。」
リヴァイさんは言うと、私の前に座る。
いつもの風景だ。
お風呂上がりで上気した顔、濡れた髪。
相変わらず綺麗な姿だった。
「…………」
「…………」
思わず見とれている私と、黙ってご飯を食べるリヴァイさん。
沈黙も相変わらずのことだった。
そういえばリヴァイさんの口から、「おいしい。」という言葉を聞いたことがない。
いつも私が「おいしいですか?」と聞くと「あぁ。」と言う。
ただ、それだけ。
告白は私からだった。
プロポーズはリヴァイさんからだった。
でも………、本当にリヴァイさんは私が好きなのだろうか。
「……リヴァイさん、」
妻なんていうのはただの肩書きで、本当はリヴァイさんに雇われただけの家政婦なんじゃないのか。
「おいしい、ですか?」
「あぁ。」
リヴァイさんの口から、何も……嬉しい言葉、聞いたことないじゃん私。
「……なら、良かったです。おかわりします?」
「いや、いい。」
「そうですか。」
もう、よく分からないや。
私はリヴァイさんのお皿を片付けようと手を伸ばす。
「おい、ルナ」
「は、はい?」
するといきなり手を掴まれた。
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