ショート集
□本気だってば
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『で、何であんたがいるの』
「迎えにきてやった」
『頼んでない』
「付き合ってんだからいいだろ別に」
登校しようと玄関を開けるとすぐ、うちの制服を着た男子がチャリに乗ったまま明らかに誰かを待っているっぽいのが目に入った。そしてそれは紛れも無い高杉で。
つーかこいつ今、何つった。
『誰と誰が付き合ってるって』
「あ?俺とお前が、だろ」
『…いつから』
「昨日だろ」
『…』
高杉の発言に思わず眩暈がした。昨日って…確かにこいつに告られた、けど。それに対して『わたしも好き』なんて答えは出してない。大丈夫かこいつ。
「お試しで、て話になったろ」
『…あぁ、うん、まぁそうなんだけど』
あれ、なんかおかしくね?そんな終わり方したっけな。もはや怖いよ、こいつ。
「俺なりに尽くしてみようかと」
『あーそうなの』
「つーわけで行くぞ、乗れ」
『まぁ、乗せてくれるんならその方が助かるけど』
「おう」
まぁいいか。歩くのだるいし、それに時間もちょっとギリギリだし。それはこいつのせいでもあるから、乗せてって当たり前なんだけど。もういいや、この話しには否定も肯定もしないでおこう。別に被害があるわけでもないし。
とか思っていたのが間違いだった。あたしってば馬鹿だ。何も考えて無かった。
こいつの存在も、こいつの知名度も、こいつの取り巻きの事も。
「着いたぞ、降りろ」
『やっべー』
「んだよ」
『今ここにたどり着くまでに何人の女子高生に騒がれて睨まれたと思う?』
「30人くらい?」
『リアルに答えんなよ、あーあ勘違いなのに、もうめんどくさい』
「なんだよ勘違いって、仕方ねぇだろ」
『3年の目が怖かった』
「気にすんな」
『面倒な事にさえならなきゃ別にいいんだけどね』
「安心しろ、俺が守ってやるから」
『やっばい寒気がする』
気温とか風のせいじゃなくて。高杉の気持ち悪さに。
「お前は本当に分かんねぇな」
『あんたに言われたくないよ』
「俺にここまでさせる女は初めてだからな」
『は?何が』
「後ろ乗せてやんのとか、俺から告白すんのとか」
『…』
そうなんだ。誰にでもやってんのかと思った。
「だからお前を絶対落とさねぇとなんだよ」
『それはせいぜい頑張って、高杉くん』
「おう、お前もな」
あたしが何を頑張るっつーのよ。やっぱり馬鹿だこいつ。
でもどうやらあたしの事は一応本気みたい。
(20091027)シリーズ化に持ってゆこう。