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□それはいつも同着で…
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「何だかんだ言いながら、ちゃんと走ってんじゃねーか沢村」
「バーカなめんなよ!これでもオレは学校のマラソン大会で、1位2位を争うイダテンだせ」
夏合宿でマラソンをしている時だった。この会話が出たのは。
学校のマラソン大会で、1位2位と好成績を残している沢村。
1位になった、2位になった。口で言ってしまえば簡単だ。だが、そこには毎年壮絶なる戦いが行われていた。
(3年前のマラソン大会・沢村編)
「なんだよ、誰も着いてこねーじゃん」
トップは沢村。独走状態だった。
「張り合いがねーとつまんねーな」
その時だった。後ろから物凄い勢いで誰かが走ってきたのは。
「ゆっくり走ってたつもりが、もうトップに追い付いちまったぜ!最後に1位になるのはオレだけどな。そんじゃ!(おとさん、オレ頑張るから天国で応援しててくれよ)」
少年はそう言うとゴール目がけて走っていった。
「……面白れーこと言うじゃん!!そう簡単にトップを譲れっかよ!!」
負けず嫌いなのか、沢村も本気で走りだした。
「待てよ!追い抜いてやる――!!」
「待てって言われて待つ奴はいませーん!」
二人は追い抜け追い越せ、熾烈な争いを見せた。マラソン大会の結果は同着。
「来年こそは、この沢村が1位になってやる!!」
「あいつ、なかなかやるじゃん。誰だか知らねーけど。来年のマラソン大会も楽しくなりそうな予感」
いかにも互いをライバル視しているこの二人。だが、単純細胞なこの二人から、ライバル意識が消えるのは速かった。たまたま廊下で鉢合わせしても気が付かない。マラソン大会のことは3日経つと二人の頭からスッカリ消えていた。
(2年前のマラソン大会・吾郎編)
「後ろには誰もいねー。前にいるのは、なんか後ろ髪の跳ねまくってる奴一人……。」
本気を出せば追い付ける、その位先頭は直ぐ近くにいた。
「しゃーねー。速くゴールして皆が来るの待っとくか」
吾郎はペースを上げた。そして先頭と並んだ。
「ああ?なんだお前?オレと張り合おうってんのか?」
名も知らない、後ろ髪の跳てる奴が話し掛けてきた。
「別にー。張り合う気はねーけど、そっちがやる気ならその勝負乗るぜ!」
斯くして二人の激しいトップ争いが始まった。二人は去年の事など全くといっていいほど覚えていない。去年もマラソン大会のトップ争いをした事を。
結果はまたもや同着だった。
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