歩調を合わせて
□waiting fou you:after
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「おい、おい深山木」
するり、と隣にやってきた男の声に、秋が「げ」という顔をした。
直也は思わず吹き出しかけたが、虎徹の方が気付いていないようなので、慌てて目を逸らす。
声だけ聞いていると、秋はしっかり愛想笑いを貼り付けたようだった。
「何か用?」
「お前、アイツと面識あったって本当か?」
「アイツ?」
きょとん、と虎徹の視線を追った先には、秋もよく見知った少女の姿。
まさか、こんなところに共通の知り合いがいたとは思わなかったので、驚いて話し掛けたのを見ていたのだろう。
「何?彼女がどうかしたの?」
「お前、アイツとどういう関係なんだよ」
「どういうって…オトモダチだけど」
「それだけか?」
「それ以上の何をお望み?」
にこ、と笑顔を取り出す秋を見て、虎徹が大袈裟に息を吐き出す。
その様子をそっと見ていた直也は、へぇ、と思った。
最近仲間になった彼女の面倒をよく見ていたのは、そういうコトか。
「そういうコトはさ、本人に聞くのが手っ取り早いって、知ってる?」
にっこりと怖いくらいの笑みを浮かべた秋に、虎徹が訝しげに眉を寄せる。
「だから、本人に聞いてんだろ。お前だ、お前」
「あれ、そうだっけ」
とぼけたようにそっぽを向いた秋を見て、とうとう直也が吹き出した。
「あ、直也ってば何笑ってんのさー」
「いや、秋があんまり面白いから」
「何がおもしれーんだよ」
不機嫌そうに2人を一瞥すると、虎徹はあっさり席を立った。
彼の姿が、渦中の彼女の元に向かうのを見て、秋が目を細める。
その様子を横目で見ていた直也は、こっそり息を吐き出した。
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