Thanks a lot

□フライング
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「そういえば、お前に渡す物があった」

そう言ってアイズのポケットから出てきたのは、綺麗にラッピングされた小さな包みだった。

「何?これ」
「クリスマスプレゼントだ」

予想外の言葉に、出しかけた手が止まる。
いくらなんでも、クリスマスには気が早いだろう。

「まだ、早いよね?」
「当日は仕事だからな」
「…あぁ、そっかぁ」

がっかりした気持ちが声に出てしまい、慌てて笑顔を貼り付けて包みを受け取る。
アイズが悪い訳じゃないのだ。
包装紙を破かないように、開けることだけに集中した。

「わ、可愛い!ありがとう!」

中から顔を出したのは、少し大人びた腕時計。
勢いよく顔を上げると、彼が蒼い瞳を細めていた。
実は今まで、時計をする習慣はなかったのだけど、これからは付ける事にしよう。
そう考えて包みを元に戻していると、アイズが再びポケットに手を入れた。

「それを付けて来ると良い」
「…どこに?」

手渡されたのは、封筒に入った1枚のチケット。
タイトルはクリスマスピアノコンサート。
…そういうコトか。

「仕事ってコレ、だね?」
「あぁ。だが、お前がいれば、お前の為に弾けるからな」
「真面目に仕事しなよ」

私の言葉に薄く笑うと、何気なく袖を捲って手首を見る。
…いつもは彼も、時計なんてしていなかったと思うんだけど。

「アイズ。もしかしてこの時計、お揃いだったりする?」

そっと尋ねると、呆れたような顔をされた。

「気付くのが遅いぞ」
「だって!まさかと思うじゃない!」

そういうのには、興味ないとばっかり思ってた。
嬉しくて顔が緩んできた私から視線を外して、何でもない事のように、さらっと言う。

「同じ時計をすることは、同じ時間を共有することを表すと聞いたからな」

そんなクサいこと、どこで聞いてくるのやら。
彼の一言一言が、やたらくすぐったくて、笑いながら首をすくめた。

なら私は、この時計を肌身離さず付けていよう。
そう、こっそりと胸に誓いながら。



〜メリクリ♪〜



―――Fin.Thank you for Reading!!
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