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□年越しコール
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大晦日の夜、間もなく年も明けようかという時間に携帯が鳴った。
着信元を見て、新年おめでとうコールかと思ったけど、それには少しフライングだ。
「はいはい」
『あ、えと、ミズシロです』
そんなコトはわかっている。
公衆から掛けてくるのも、鳴海くんちの電話から掛けてくるのも、私には彼しかいない。
「なーに?まだ年、明けてないよ?」
『そらそうやろ。俺の時計かて、そこまで狂ってへんで』
「あら、それは失礼。じゃあ何か用だった?」
『用、はないんやけど…今年も1年、ありがとう』
「え?あぁ、こちらこそ」
『へへ、2006年の締めくくりをちゃんとしとかんと、って思ってな』
「あはは、律儀だねぇ」
『当たり前やんか。お、カウントダウンや!』
「あ、ホントだ」
リビングから、テレビのカウントダウンが聞こえた。
声を合わせて、数字を数える。
・
・
・
5
4
3
2
1
『明けましておめでとう!』
「おめでとうございます。…ふふ」
『何やの、気持ち悪い』
「失礼な。ただね、今年もいい年になりそうだなって思って」
『何、最初に聞いたんが俺の声やったから?』
少し意地悪な口調で、でも声には嬉しそうな響きが溢れていて。
素直なヤツだな、まったく。
『なーに、ニヤけとんねん』
「ニヤけてませんー」
『いーや、ニヤけてんで、絶対。目に浮かぶんやもん』
やたら自信に溢れた言い方をする。
きっと受話器の向こうで、胸でも張っているのだろう。
「私も今、火澄が胸張ってるトコが浮かんだよ…」
『ははっ、そしたら8時にまた、いつもんトコな』
「朝の8時?また早いね」
『何言うてんの、初詣には遅いくらいやで?』
「あぁ、そっか。じゃあ、それに備えて寝よっかな」
『うん、おやすみ』
「おやすみー」
一瞬の年越し。
ひとときの幸せ。
毎年繰り返されてきた何気ないことですら、君となら特別な時間になるから。
今年もよろしくね。
〜あけおめ!〜
―――Fin.Thank you for Reading!!