Thanks a lot

□年賀状
1ページ/2ページ

「深山木ッ!」

ばたばたと、他人の家に派手に上がり込む。

「おや、いらっしゃい」
「あ、座木。あけおめ!」
「明けましておめでとうございます」

くすくすと笑いながら、座木が当たり前のように迎え入れてくれた。

「何なの?新年早々、騒々しいね」
「ちょっと深山木!あんた字、汚すぎ!」
「…新年最初の挨拶が、それ?」

途端に小さな子どもみたいに、むすっとした彼の前に、家から持ってきたハガキを突き出す。
ずっと手に持っていたから、少し曲がってしまっていた。
慌てて、テーブルに押し付けて平らにする。

「…年賀状、ですか?」
「そうだよ。コイツからのね」

ひょこ、と覗き込んできたリベくんに説明する。

「表はパソ打ちだから、郵便屋さんにご迷惑を掛けずに済んだけど」
「あ、だからちゃんと届いたんですね。でも師匠、年賀状なんて書いてたんだ」
「一応、私が欲しいって言ったんだけどね。読めなきゃ意味ないと思うわけよ」
「確かに」
「こら、そこ。何、納得してる」

深山木がリベくんの頭を叩こうとしたので、すかさず間に手を入れる。

「こら、子どもをイジめるな」
「なら、僕のことはイジめても良いって言うんだ?」
「嘘泣きもしない!」

素早くツッコむと、本当に嘘泣きするつもりだったのか、ぺろりと舌を出した。

「大体さ、ちゃんと内容は伝わってるんだから、怒ることないと思うんだよね」
「まっっったく伝わってませんけど?」
「何言ってんのさ」

私の呆れた台詞に、呆れた声で返された。

「だって、これ。“明けましておめでとう。お正月も遊びにおいで”って書いてあるじゃない」

ちゃんと来たでしょ?と可愛らしく首をかしげる仕種に、思わず頬が引きつる。
私は元旦から、深山木に踊らされてたって事か?

「折角いらしたんですし、良かったらご一緒しませんか?」

ふいに背後から声を掛けられて、一瞬会話についていけなくなった。

「…何に?」
「これから、お雑煮とおせちを食べるんです!俺も手伝ったんですよ!」
「そうそう。昨日いそいそと詰めてたヤツな」

にこにこと笑う彼らを見ていたら、何だか気が抜けてしまう。
急に、お腹も空いてきた。

「じゃあ喜んで、頂いていきます!」

今年もまた、こんな風に過ごすんだろうな。
また1年、よろしくね。


〜あけおめ!〜



―――Fin.Thank you for Reading!!
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ