*宝箱*

□From.彩希サマ(薬屋)
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 −シャボン玉−


ふーっ


少しずつ息をストローに吹き込むと、その先からジワジワと虹色に輝く物体がふくらんでいく。
もう少し、もう少し、そう思いながら目標の大きさを目指してもう一吹き…


パチン


シャボン玉は耐え切れずに弾けてしまった。
何度やっても結果は同じ。
あと少しという所まではいくのだが、ストローから離れる前に消えてしまうのだ。
材料は水に市販の食器用洗剤。
朝、テレビでやっていた通りなのに、どこが悪いのだろうかとリベザルは首を傾げていた。

先ほどから息を吐き続けているせいで酸欠に近い状態でクラクラと眩暈がする。
少し休憩しようと目を閉じてゴロリと後ろに倒れ込み、深呼吸をすると爽やかなハーブの匂いがした。
その香りを嗅いでいると自然と心が落ち着いてくる。
ゆっくりと目を開けると、そこには予想通りの人物が立っていた。


「師匠?」


何か用事なのかと見上げていると、秋はリベザルの目の前でパチリと指をならして1本の試験管を取り出した。


「シャボン玉が上手くふくらむ魔法のような粉なんだけど、いる?」


そう言って横に振る試験管の中身は白い粉だ。
秋の薬は効果は絶大だが、あまり身体に良くなさそうなもので溢れている。
今回のはどうなんだろうと考えるリベザルの前でその粉を手の平に出し、ぺろりと舐めた秋が一瞬顔を顰めているのを見て、リベザルはさらに不安になった。


「苦いんですか?」

「いや。」

「師匠が食べたってことは、身体に悪いものじゃないんですよね?」

「食べ過ぎたら身体に悪いものかな。」


でも、と秋は言葉を続ける。


「別に液を飲むわけじゃないし、関係ないだろ?」


その言葉にリベザルは首を傾げる。


「え?でもお薬ですよね?」

「薬なんて一言も言った覚えないぞ」


そう言われて記憶を辿るが、確かに秋は一言も薬とは言ってない。


「それに、仮に薬だったとしても飲み薬とは限らないだろ。」

「じゃあ、どうやって使うんですか?」


その言葉に、貸してみろとリベザルの手の中のシャボン液を受け取って、その中に先ほどの粉を入れてかき混ぜた。


「出来上がり〜」


そしていつの間にか取り出したのか秋の手に握られていたストローを浸けてふーっと息を吹き込んだ。
リベザルも身を乗り出して見つめていたが、自分の呼吸がシャボン玉を揺らしていることに気付いて慌てて両手で口を押さえた。
その間もジワジワとシャボン玉がふくらんでいく。
もう少し、もう少し、今度は割れずに大きくなっていって…
ふわっとストローから離れたシャボン玉はそのまま上へ昇っていった。


「すごいっ」



リベザルが見守る中、いくつものシャボン玉が生まれていく。
ふわふわ、ふわり。今度はどこまで飛べるかな?


END.
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