Thanks a lot

□your choice
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「あ、鳴海くんっ!良い所に会った!」

ばったり出くわしたクラスメイトの腕を、がっしと掴んだ。
目を白黒させる彼を見ていると、少し位照れてくれてもバチは当たらないのに、とか思ってしまう。

「おい、俺は夕飯の買い物に来たんだが」
「うん。でもその前に、ちょっとだけ付き合ってよ」

半ば強引に連れて行った先では、浮き足立った空気と、様々なハートが出迎えてくれた。
シーズン限定、特設催し物会場に作られた、チョコレート売り場である。
沢山のチョコレートと、それを選ぶ女の子達でごった返す空間に、鳴海くんの足が、じわりと下がった。
掴んだ腕に力を込めると、嫌そうな顔でこちらを睨んでくる。

「こういうのは、自分で選ぶから意味があるんじゃないのか?」
「1人じゃ選べなくて、困ってたんだもん。クラスメイトの危機を見捨てないでよ」
「危機って…そもそも、あんた制服だけど、一体いつからいるんだ」
「…放課後ココに直行して、ずっといる」

周りのお客さんは、確実に全員入れ替わっている。
鳴海くんも既に学ランではないから、1度家に帰っているハズだった。
情けなくて視線を逸らすと、わざとらしい溜め息が降ってくる。

「勘弁してくれ」
「うー、ごめん」
「良いから、さっさと決めてくれよ」

背中を軽く押されて、いつの間にか腕を離していたことに気付く。
慌てて振り向くと、ふわりと笑う鳴海くんと目が合った。
この人は結局、とんでもなく面倒見が良いのだ。

「ね、鳴海くんだったら、どんなの貰ったら嬉しい?」
「俺に聞いてどうするんだ?」
「参考にさせて頂きます」

ったく、と息を吐きながらも、コレとかコレでも良いんじゃないか?なんて次々に指差していく。
私は、それらの商品と彼の表情を見逃さないよう、頭に刻み込む事で精一杯だ。
だから、ふいに鳴海くんが振り向いた時、反応が遅れてしまった。

「わ、え、何?」
「今までの、やっぱり全部取り消しな」
「え、何で…」
「選択肢は狭い方が良いだろ?だから、コレかコレだ」

ぽんぽん、といつから持っていたのか、2種類の小さな箱を手に乗せられる。
あくまで俺の考えだから他のにしても良いぞ、と付け加えると素早く踵を返した。
そういえば彼は、夕飯の買い物に来たんだって言ってたっけ。
彼の台詞をぼんやりと思い出して、そのままレジに向かった。


「…あんた、まだいたのか」
「鳴海くんを待ってたんだよ?」

呆れたような声に、拗ねた口調で返すと、鳴海くんがきょとん、とした。
店の外に出ると、すっかり陽も落ちていて、吐く息が白く煙る。

「さっきのチョコ、結局、両方買ったんだ」
「はぁ?」
「だから、1コあげるね。ちょっと早いけど、ハッピーバレンタイン!」

できるだけ軽く言ってみたけど、彼は受け取って良いものか決めかねているようだった。

「無理矢理、付き合わせたお礼だよ」

へらっと笑って言うと鳴海くんが、ゆっくりと瞬いた。
やがて、納得したように薄く笑うと、私の手から静かに箱を取る。
綺麗にラッピングされた、甘いハートの粒。

「さんきゅ」
「私こそ」
「あんたはこれから、頑張るんだろ?」

意味有り気な彼の視線を追うと、私が手に提げている、もう1コのチョコレート。

「あぁ、あはは。うん、まぁ、何とか」

あやふやな返事を照れ隠しだと解釈したのか、彼は1つ笑って背を向けた。

「じゃ、また明日」
「うん。明日、学校で!」

片手を上げて返してくれる彼を見送って、ふと手に提げたチョコを見下ろすと、思わず笑みが零れてきた。
せっかく鳴海くんが選んでくれたチョコレート、自分のために買ったに決まってるじゃないか。


―――Fin.Thank you for Reading!!
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