Thanks a lot

□甘いモノとは限らない
3ページ/3ページ

「どうぞ」

帰ろうと扉に手を掛けた私に、座木が小さな包みを手渡してきた。

「何?コレ。お土産?」
「チョコレートです」
「…おすそ分けなら間に合ってるけど」

いや、甘いモノは好きだから貰えれば嬉しいけど、座木が貰ったチョコなんて、はっきり言って見たくもない。
恋敵の存在は、あくまで空想の人物だから平静を保てるのだ。

そう思ったら、自然と語調が荒くなってしまった。
情けなくて、無理矢理チョコを付き返す。
すると座木が苦笑しながら、再び包みを差し出した。

「そうではなくて、私からのプレゼントです。受け取って貰えますか?」
「…何のお祝い?」

誕生日は遠いし、と眉を寄せると、座木が私の手をとって包みを持たせる。
されるがままに、私の手に収まったチョコレートを眺めていると、座木がにこりと笑った。

「バレンタインのプレゼントです」
「はぁ?」
「日本以外では、男性からも贈り物をするんですよ」

…それは、つまり。

「ありがと」
「どういたしまして」

温かい心が溢れないように、そっとチョコを手で包み込むと、座木が嬉しそうに目を細めていた。


-END-

座木は英国紳士なので、本命にはきちんと用意してるって信じてる…!

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ