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□独占欲
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「あ、そうだ」
突然、鳴海くんが鞄から取り出した箱に、私と火澄くんが目を瞬いた。
「歩、これ何?」
「今日は3月14日だからな。先月のお返しだよ」
「わー、ホントに?ありがと〜!」
失礼ながら、思いっ切り義理だったので、お返しがもらえるとは思っていなかった。
もらえるモノは、純粋に何だって嬉しい。
「えー、歩ももろてたんや」
「…お前の目の前でもらったぞ」
「2人一緒にあげたでしょ」
「あれ、そーやったけ」
いつだって2人一緒にいるのに、火澄くんにだけ渡したら、あからさますぎるじゃないか。
そう思って、あえて堂々と2人に渡したのだ。
見てなかったハズはないんだけど。
「それにしても、鳴海くん、ちゃんと全部お返しするんだね」
「?まぁ、一応な」
「お人好しやからなぁ。でも、それおさげさんが見たら怒りそうやね。浮気やーって」
「どうしてココで、あれが出てくるんだ?」
「そうですよ。別にそんな事で、今更怒ったりしません」
ぎく。
ふいに会話に加わってきた4人目の声に、私と火澄くんが慌てて振り向く。
いつの間に来ていたのか、噂の“おさげ”の新聞部長さんが、すぐ後ろに立っていた。
「鳴海さんがお人好しなのは、今に始まったことじゃありませんからね」
「まぁ、そーやろね」
「でも、そもそも1ヶ月前に、うっかりちゃっかり受け取っちゃった、鳴海さんも鳴海さんなんですよ!」
うんうん、と大袈裟に頷いて鳴海くんに詰め寄る。
「まったく、お昼休みになってもなっかなか部室に来ないから、こうしてお迎えに来てみれば。仲むつましげに女の子にホワイトデーですか。お腹を空かせたひよのちゃんは後回しですかっ」
「あーもぅ。分かったから、ほら」
がしがし、と自分の髪をかき回すと、乱暴に鞄を掴んで立ち上がる。
「じゃ、そういうコトだから」
「おー。いってらっしゃい」
「いってらっしゃ〜い」
残された2人の周りには、ぱらぱらとクラスメイトが集まってきた。
「さて、俺らもお昼にしよか」
「そだねー」
何てことはない。
これも、彼がクラスにやって来てから、繰り返されている日常だ。
-END-
特にオチなくて、すみません…「浮気だってひよのに怒られるよ」って言わせたかっただけでした。