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□かきくけこのお題
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***コロンブスの卵***
「えー、秋ずるーいっ!」
「ズルくないよ。これはコロンブスの卵って、立派な名前まであるくらいなんだから」
知らない方が悪い、とすました顔で言われても、知らないものは知らない。
ゆで卵を先に立てられた方が勝ち、というシンプルなゲームに、そんな奥の手があるなんて、知るわけないじゃないか。
「秋は知ってたんでしょ。だったら最初っから勝負になってないじゃないか〜」
「そんなの、知らずに受けて立った側の落ち度でしょ」
うぅ、秋に言葉で勝てるわけもない。
「うー、秋はずるいーずるいよー」
「語彙が貧相だな」
「そういう言い方も含めて、ずるいー」
「何がズルいんだよ」
言ってみな、と半眼で促されて、言葉に詰まる。
私に言わせれば、そんな表情も様になる秋は、もう全部ずるい。
「僕に言わせればさ」
大きく息をついて、秋がちら、と視線を外す。
何だろう、と思った次の瞬間には、すぐ近くに彼の顔があった。
「その表情も、充分ズルいよ」
誘ってんの?と囁いて、返事をしようとした私の声を塞ぐ。
ほら、秋はいつだってずるいんだ。
Fin.20080514-16/with AKI
title from:液体窒素と赤い花