Thanks a lot
□まみむめもで5題
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「あ、桜庭さ、」
張り上げようとした声を、寸でのところで飲み込んだ。
通りを挟んだ向こう側を歩く彼の影に、連れの姿が見えたからだ。
栗色のショートヘアを柔らかく揺らして、桜庭さんにまとわりつくようにしながら歩いている。
ちらりと見えた綺麗な横顔と、その弾むような足取りから、さすがの私でも何かを察した。
***短い恋だった***
「次に会ったら、徹底的にからかってやるから、覚悟しとけよ」
決意を小さく呟いて、背筋を伸ばす。
照れると思っていた彼から、予想外の真実を聞くことになるとは、まさか夢にも思わずに。
Fin.20080528/with 01
相手はもちろん、深山木さん。
title from:液体窒素と赤い花