ROMAN
□〜恋は雨のごとく流るる〜
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鮭伊国の城はやけに騒がしかった。
光一郎が鰤夜国に内密に出向くと言い出したからだった。
「本当に出向かれるのですか?光一郎様。」
四三郎に仕えている禅が廊下を歩いていると、後ろから歩いてきた。
「あぁ。お前が言い出したことでもあるだろ?」
「そうですが・・・よろしいのですか?」
「何がだ?」
「いや、別に。」
「私は、戦争が嫌いなのだ。父上とちがって、父上は遊び半分であんな・・・残酷なことをする。人と人が武器をもって戦うのだぞ?」
「それが・・・残酷なのですか?」
「お前は思わないのか?・・・なんだか悲しいのだ。戦わされている兵にだってそれぞれ家族はいる・・・なのに・・・。」
「でも、兵はそれを分かっていながら出向いてきたのでしょう。当然のごとく死を全員覚悟の上です。」
「お前も・・・悲しいな。」
「光一郎様は・・・戦争が怖いのですか?」
禅は不敵な笑みを浮べる。
「怖い?それは違う。」
「でしたら・・・この戦争に勝てばいいだけのことです。そうすれば終わります。鰤夜国はこちらのものにもなります。わざわざ光一郎様が犠牲にならなくても構わないのですよ。敵国の何も知らないような姫を嫁にもらう必要もなくなります。」
「お前は・・・何も分かってない。」
「そんなに自分のお父上が嫌いですか?」
光一郎は眉間に皺を寄せる。
「・・・あぁ。そうだな。」
「そんなに前陛下がお気に入りで?ただの愚か者と言われていたじゃありませんか。」
「おじい様の事をそんな風に言うな!!おじい様は愚か者なんかじゃない。」
「・・・・光一郎様は頼る方がおじい様しかいらっしゃらなかった、だからですか?おじい様の後を追うように・・・。」
「おじい様が元気だった頃は平和だった!この国も鰤夜国も・・・なのに父上のせいで・・・。」
「そうですか・・・とりあえず行かれるのはかまいませんが気をつけてくださいね。鰤夜国の姫も・・・とても変わり者だとか・・・あなたのような方なら意外と気が合うかもしれませんね。・・・・後、まだ鰤夜国には上には清介がいることをお忘れなく。・・・戻って来れなくなる確立の方が高い・・・。」
「それでも・・・やってみるさ・・・私が終わらせる。」
光一郎は立ち止まり空を見上げた。
ただ、約束を守るために・・・。
戦争を終わらせて見せる。
「お前にはない武器を私は持ってる。」
「なんですか?顔ですか?」
「違う。顔ならお前も十分・・・・。」
「若さですか?」
「・・・お前とはそんなに歳が離れていたか?」
「10歳ほど離れているのですが・・・。」
「お前には・・・分からない武器だ。」
「ならば・・・その武器をせいぜい生かして戦ってきてくださいね。それでは失礼します。」
光一郎はなんとしてでも、うい姫を自分のものにしなければならなかった。
子供の頃に約束した事をまた思い出す。
終わらせる、必ず。
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禅は廊下を歩き自分の自室に入ろうとしたがその戸の前に人影がある。
禅は眉間に皺を寄せた。
「ほぉ〜う。光一郎様とお喋りねぇ〜。またいらない釘をさしてきたんだろう。」
「お前は何故私の部屋の前で待ってる?きもちわるい。」
「気持ち悪い?それは酷くないか?親友に向かってそれは・・・俺が傷つかない人間とでも思ってるのか?」
「あぁ。それに私はお前の親友になった覚えはない。」
「なら何?恋人か?俺そんな風に思われていたのか?・・・すまないが俺そんな趣味は悪いがない。」
「消えろ。」
「怒らないで〜」
「帰れ。」
「すいません〜」
「邪魔だ。」
「分かった分かった。すいません。もう二度とふざけた事は言いません許してください禅さま〜ぁ。」
「何のようだ?」
禅は眉間の皺はよったままだが廊下で突っ立っているのも気になるので中にその男を招いた。
彼も四三郎に仕えている1人四季だ。
四季も禅と並ぶほどの優秀な部下なのだが違うところは少し四季は楽天的なところがあり人なっつこい所がある。禅のようにいつも回りに神経をただ寄わせていたりはしていないようだ。そして近づくなという、オーラも出していない。少し抜けた感じに見える四季だが頭の回転だけは禅よりも速い。
そんなところも禅は勝手に昔からライバル視しているようだ。
「俺さぁ〜お前が何考えてるか分かったわ。」
「そんなくだらない話をするために私の部屋の前で待っていたのか。」
「うん。」
「暇・・・なんだな。」
「う〜ん、暇ではないかな・・・。」
「なら何故?」
「ずっと解きたかった謎の1つだったから!お前は光一郎様を向こうに送りつけてしまって・・・もうその時点で帰ってくる事はないと予想していて次の王になりたい・・・・違う?」
「ほぉ〜。」
「・・・正解?」
「どうだか・・・。私にもたまに自分が分からなくなる。」
「・・・・大丈夫?あのさ〜神経張りまくってるからでしょ〜疲れるよぉ〜。たまには息抜きしなきゃ早死にするよ〜」
「大丈夫だ。」
「だといいけど・・・。それにしても楽しそうだねぇ〜。」
「あぁ。・・・・これで十分な息抜きだ。」
「俺には無理だわ・・・疲れるわ〜お前見てるだけで疲れるわ〜やっぱり可愛い女の子と一緒に話している方が幸せだわ・・・」
「・・・・。」
四季は部屋に入ってから勝手に自分で入れたお茶を禅に渡した。
そして禅の前に座り込む。
「まっせいぜい好きにすれば?でも・・・予想が外れることもあるからね。」
「分かっている。」
「ほぉ〜さすが禅さま〜凄〜い。」
「その喋り方本当に腹が立つんだが・・・。」
「う〜んゴメン。昔からこれなんだからいい加減なれてよ。」
「お前といると気が抜ける。」
「えっ俺癒されキャラ?」
「違う。この馬鹿が。」
「本当俺にだけは酷いこと言うよねぇ〜」
「あぁ。」
「あ〜こわこわ・・・。」
「はぁ〜また暇になっちゃったなぁ〜。」
「お前はいざとなれば私を助けてくれるのか?」
「・・・・・今から味方探しですか?本当にお忙しい事・・・。」
「どうかと思ってな。」
「俺はそろそろ退散しま〜す。残りの仕事でもしようかな・・・。」
「お前ならあれぐらいの量1日で終わらせてしまうだろう?」
「でもまっ気が向いたときにやっとかなきゃ後からじゃ遅いかもだしねぇ〜。」
「・・・・そうか。」
禅はお茶を口にして溜息をついた。
「じゃまた会いに来てあげるよ。あっそうださっきの返事だけどねぇ〜味方にはならない。・・・でも敵にもならない。」
「・・・・そうか。」
「なんか今俺・・・ちょーカッコイイこと言わなかった?」
「・・・お前にしたらな。」
「でも、俺気まぐれだし・・・・分かんないかも。」
「だろうな。」
「言い切れないところがまた俺のいい所でしょ?」
「どうだか・・・。」
「それではバイバイー。また楽しみが出来たよ。お前を見守るという・・・。お前も光一郎様に似ているといえば似てると思うんだけどね〜・・・」
「そうか。帰るならとっとと帰れ!」
「はいはいさよーならー。」
四季は部屋からそそくさと退散したのだった。
「味方にもならないし・・・・敵にもならないか・・・・。」
禅は台詞を繰り返し少し微笑んだのだった。