ROMAN

□〜恋は雨のごとく流るる〜
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うい姫は庭を散歩する事にした。
何故か動いていないと何かが崩れていってしまいそうな気がするからだった。
空はこんなに青くて・・・
咲いてる花はそれぞれ美しくて・・・・

先ほど佐助や紅葉、伊助に聞いた話を思い出していた。
鮭伊国の光一郎が自分を嫁にしようとしている事。
そして、この城の中の誰かが鮭伊国に情報をばら撒いている事。
どうやってこの2つを片付けようか・・・。
そんな事も思いながら庭を歩く。
沢山の従者や高官にも会った。
皆ただ、うい姫を見て微笑み頭を下げるだけ。
侍女を1人も連れないで歩いているのは少し不味かったか・・・。

「うい姫?」

声の方を振り返ると、慎太郎が歩いてきた。

「どうしたんだ?1人で・・・。」

「少し・・・考え事を・・・。」

「何か悩みでもあるのか?」

「悩みではありません。」

「ご一緒しても構いませんか、姫。」

慎太郎はふざけた口調で優しく微笑む。

「・・・どうしたのですか兄上?」

「何か思い詰まった顔をしていたから少し心配になって・・・・」

「心配なんて必要ありません。大丈夫ですよ。」

「お前は1人で思い悩む癖があるから・・・」

「心配ですか・・・。」

うい姫は少し俯いた。

「でも、大丈夫と言うのならば・・・。」

慎太郎は微笑んだ。

「お兄様にお時間があるのなら・・・・」

「なら行こうか」

「はい。」

慎太郎とうい姫は城の中心にある1番美しく飾られた庭園を散歩する事にした。
たまに気持ちのいい風がうい姫の髪を揺らす。
季節の花々はただ美しく咲き誇っている。
木々は風とともに揺れている。

「お兄様はお父様やお母様がお好きですか?」

「・・・あぁ。あまりお梅様とは顔を会わせることはないんだが・・・。」

「そうですか・・・。」

「でも父上や陛下のことは本当に尊敬している。うい姫は本当に恵まれているな。」

「そんな事ないです。そんな風に見えるだけです。お兄様の・・・もとのご家族の方は?」

「父は政治にしか興味はなく母はただ貴族の出だから好きに過ごしていた。だが、あまり両親と顔を会わせることなんてなかった。いつも侍女達しか居なかったな。両親とは1年に1回顔を合わせられればもう十分と思っていたし・・・」

「そうなんですか・・・。私もあまりお父様の顔は見ることがないのですけど・・・先日久々にお会いしたのです・・・本当に久しぶりだったのです。」

「うい姫は本当にお父上の事が大好きなんだね。」

「はい。」

「私は?」

「お兄様・・・・」

「でも、いずれ・・・お前の兄ではなくなってしまったら?お前はどう思う?」

「それは・・・・分からないです。・・・でもきっと幸せになれると・・・・」

「うい姫。私はお前を愛している。初めて見たあの時から・・・。」

「・・・・そうですか。」

すると、慎太郎はうい姫を抱き寄せた。

「妹としてではなく、あの時から1人の女性として・・・愛してる。」

「私も・・・いずれお兄様が思っている感情が分かるのでしょうか・・・。」

「分かるよ。」

分からせてみせる。
慎太郎は抱きしめながら微笑んだ。
うい姫も彼の胸に頭を寄せた。
こうしていると少し・・・龍之介に抱かれている気持ちになる。
うい姫は本当は知っている。
慎太郎が自分に向けている想いを。
うい姫も龍之介に向けていたのだから。
まだ小さくて分からなかったのかもしれない。
でも、きっと思い出す日は来る。
そして、和彦の顔がふと思い浮かぶ・・・・

龍之介に負けたくない。
慎太郎は力をこめてうい姫を抱きしめたのだった。
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