ROMAN

□〜恋は雨のごとく流るる〜
1ページ/3ページ

第4章

昨日はあまりよく眠れなかった。
前にはゆっくり流れる川がある。
その回りは草が生えている。
そこで眠っていた和彦は空を見上げていた。
ここは、人通りが少なく誰にも見つからないだろう。
雲が流れるのをさっきからどれぐらい見つめるのだろう。
和彦は体を起こした。
草が生えている中に小さな花をみつけた。
その花を和彦は見つめた。
そして、少し微笑んだ。

・・・会いたい。

また、そんな風に思ってしまう。
その花は風に揺れた。


=*=


今日も朝から花穂と勉強をしている。
でも全然頭に入らない。
入ってこない。
うい姫はただ筆を持って止まっていた。

「うい姫様?・・・・うい姫様?どうかなさいました?お体の調子でも悪いのですか?」

「・・・・いや、違う。昨日あまり眠っていなくて・・・。」

「そうなのですか。大丈夫ですか?」

「・・・。」

また、和彦の顔が浮かぶ。

何故だろう思い出すと胸が熱くなる・・・。
こんな感情始めてかもしれない・・・

でも、どこかで会った事があるような・・・
きっと龍之介の時のものなのだろう。
だがうい姫は気づかない・・・

「うい姫様?今日はもうこのへんにしておきましょう。」

「お茶の用意ができましたよ。」

百合が丁度部屋に入ってきた。
百合はお茶とお菓子を出してくれた。
美しい花の形をしたお菓子を口に運ぶ。
甘くて・・・何故かまた和彦の顔が浮かぶ。
本当におかしくなってしまったのだろうか。
少し不安にさえなる。



そして、夕暮れうい姫は百合やお菊には黙ったまま庭を散歩することにしたのだった。
大きな木が一本、その木を手で触れてみる。

「うい姫様。」

透き通った声がする。
だが人の気配はしない。

「こっちですよぉ〜」

「オイ!邪魔だ伊助。」

また別の声がした。あたりには誰も居ない。
うい姫はただそこでじっとしたまま動かない。

「ちょっと危ないじゃないですか!!佐助さ〜ん!!うっうわぁぁぁ〜」

一人のまだ若そうな少年が何処からか降ってきた。

「痛いです!!佐助さんのバーカ!!」

「誰が馬鹿だ!!」

今度は何処からか手裏剣が飛んできた。
伊助と言った少年はすれすれでよける。

「佐助さん!!佐助さんは僕を殺す気ですか!!」

「違う違う。たまたま投げた手裏剣がたまたまお前の方に行ってしまったんだよ。」

「そんなわけないじゃないですか!!っていうか今投げる必要ありました?」

「うるさい。」

透き通った声の主が急に現れたように見えた。

「紅葉・・・。相変わらずだな・・・。」

紅葉と呼ばれた者は、髪を上のほうで1つに束ねておりとても美しい顔立ちをしている。

「うい姫様。お久しぶりでございます。」

紅葉は膝をつく。

「今までは何処に?」

うい姫は、真剣な顔をして紅葉を見る。

「青山での戦争の様子見と鮭伊国の情報を・・・。」

佐助と呼ばれていた男は頭をかきながら言った。
彼は、黒い髪をぼさぼさにしたまま鉢巻で押さえているようにみえる。前髪が多いせいか左目が隠されている。佐助は木に寄りかかって伊助の生存を確認したようだった。

「お久しぶりです!!うい姫様!!お元気でしたか?凄い事が発覚したのですよそれは・・・」

伊助と呼ばれた可愛い顔をした少年が前にでて来る。
10代も前半なのだろうか?まだまだ無邪気な顔をしているように見える。
彼も膝をつく。すると明るい茶色の髪が目に入る。光の加減によれば柿色にも見える。

「黙れ伊助。お前が話すとややこしい。」

「確かに。」

うい姫は即答した。

「うい姫様まで!!ひどいです!!」

「伊助。」

紅葉は黙って伊助を睨んだのだっった。

「相変わらず・・・紅葉は怖いな。もう少し笑ってみたらどうだ?」

いつも、紅葉は無表情なのだった。うい姫は少し、紅葉には不思議な印象がある。

「はい。努力します。」

「佐助。お前までここに来たということは何かあるのか?」

「はい。鮭伊国は、戦争をそろそろ終わりにしたいと思っているみたいです。」

横で紅葉は無表情のまま佐助の続きを話し出した。

「そして、そのために・・・単刀直入に言わせていただきますと四三郎の息子、光一郎がうい姫様を嫁にもらおうと考えているようです。」

「・・・・何?戦争を終わらすために・・・?」

「はい。」

「そして、もう1つ。」

「これは大変なんです!!えっとですね・・・。」

「伊助。」

「紅葉さん怖いです!!って言うか僕にもたまには喋らせてくださいよぉ〜」

「この国の、しかもこの城に住んでいるか関係している者の中に鮭伊国に情報をばら撒いている者が居ます。」

伊助の事など無視し紅葉はただ話続けた。

「本当か?」

「はい。」

「分かった。ありがとう。また詳しく探っておいてくれ。そしてすぐ何か情報がつかめたら来る様に。」

「了解いたしました。」

「結局僕には何も喋らせてくれなかったですね!!紅葉さんと佐助さんの意地悪!!」


「うるせークソガキ。」

「もう立派な大人です!!20ですぅ〜。」

「伊助!!お前・・・20なのか?」

うい姫はびっくりして伊助の前にしゃがみこみ顔を覗く。

「はい!!そうなのです!!・・・・っていうかどうかしましたか?」

「見えないと・・・思って・・・。」

「何が見えないのですか?目が・・・目が悪くなられてしまわれたのですか?」

伊助が心配そうにそわそわしだす。

「馬鹿。」

紅葉は黙って伊助の頭を叩いたのだった。

「痛いですぅ〜!!紅葉さん何も叩かなくても!!目が悪いという事はそんなに失礼な事なのですか?」

「まだ分かってねぇ〜みたいっだなこいつ。」

「何がですか?」

「あぁ〜もういいわ。お前マジめんどくせー。」

佐助はまた頭をかいた。

「と・・・とりあえずまた何かあったら知らせてくれ。頼んだぞ。」

うい姫は立ち上がり3人の顔を見つめそう言った。

「了解いたしました。」

すると、3人は一斉に風のように消え去ったのだった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ