short dream

□すいみん薬
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『…黒鋼、あたしは眠い』

「見ればわかる」

目が細い、と言ってやると、小さく唸りながら近付いてくる。

『おじゃまー…』

「うおッ」

もう半分寝てるような状態で、俺が寝そべっていたベッドに倒れこんできた。

が、ちゃんと俺にぶつからないように倒れてくる辺り器用だ。

『…腕ちょうだい』

「字面が怖ぇよ」

『…うっさい』

普段と違ったの抑揚のない声に、思わず込み上げてくる笑みを隠さないまま頭の下に腕を入れてやる。

そのままもう一方の手で頭を撫でてやると、気持ちよさそうに口元がゆるくなった。

「お前ぬくいな」

『…おかしいなぁ、もう18歳なんだけど』

「だが、ちょうどいい」

目の前にある一回り小さな頭に顔を埋めると、くすぐったそうに身動ぐ。

『黒鋼…』

「なんだ?」

『…眠い』

さっきから何でこいつは同じ言葉を繰り返してんだ。

もう一度笑みが零れる。

「なら寝ろ。お前が起きるまで居てやる」

そう言ってやると、もぞもぞと俺の胸板に顔を押し付けて、ふふ、と笑った。

『なら…起きた時に最初に見れるのは…黒鋼だね』

ぜいたくー…、

語尾が小さくなっていき、そのまま静かな寝息が聞こえてくる。

「…阿呆」

ぜってぇ他人にそんな台詞言うんじゃねぇぞ。

小さくそう呟いて、急に襲ってきた睡魔に抗うことなく枕に頭を落とす。

意識が落ちる間際でその小さな体を抱きしめると、どこか懐かしいような匂いがした気がした。








こいつが昼寝しにくると、いつも眠くなる。






そんな暖かなとある午後。



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