トリップ少女の受難
□この世界に来た理由
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学校からの帰り際、ずっと考えていた。
何故僕なのだろうと。
他の二人はテニキャラと仲良くなろうとしている所を見ると、テニスの王子様が好きな連中だ。
だけど僕は話は知っていてもそこまで酔狂する程じゃない。確かにジャンプで読んでいたが、本すら持っていない僕が何故此処にいるのか。
何故あの糞神は僕を選んだんだろう。
『なんとなく☆』
有り得る。
めちゃくちゃ有り得る。
あの自分勝手な糞神なら、適当に選んだという理由は有り得るだろう。
「くそっ!!!」
苛立ちから足元にあった空き缶を蹴り上げる。
高く高く上がった空き缶は、見事に目の前を歩く通行人に当たった。
「って!!!!」
「あ」
「何しやがるっ!!」
見るからにチンピラな男は僕の胸倉を掴み怒鳴りつける。まぁ、僕が悪いんだし一発ぐらいは目を暝ろう。
「あのっ」
「ああ〜?」
「いくらなんでも女の子に暴力は駄目ですよ」
「なんだテメーは」
ピンチの時に現れたのは、長身の銀色の髪の王子様。わぁ〜格好良い(棒読み)
な、なんでお前っ!?
「女の子に手を挙げるなんて最低ですよ」
「なんだとぉ〜じゃあテメーが変わりに殴られるかぁ?」
いやいやいやいやいや。
それはないだろう。
なんで僕の変わりにこの人を殴るんだ?めちゃくちゃじゃんっ!!!
「やめて下さい。僕が悪いんだから僕を殴ればいい」
「そんなの駄目です。女性を傷付けるなんて最低の行為です」
「僕が悪い事をしたんだから僕が罰を受けるべきだ。てか、あんたに関係ないじゃん!!?」
「駄目です。目の前で女性が傷付くのを黙って見ていられません」
「あんたどんだけジェントルマン!?」
僕等が言い合っている間にチンピラはいなくなっていた。僕の【テニキャラとは口を聞かない】という決意は、たった数時間であっさり破られたのだった。
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