短編集

□華
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「零か……何故このような場所にいる。
何故、私の隣にこない。」


オルロワージュ。

魅惑の君…無慈悲なる君…この世界に住む全ての吸血妖魔の王…


わらわが最も愛し…そして、最も憎むもの…




「なあ?オルロワージュ。桜を知っているか?」


背を向けたまま静かに尋ねる。

むせ返るような青薔薇の匂いが着ている衣に…体に染み付く…

青薔薇の香りはオルロワージュの香り。

とうの昔からわらわの一番近くにあった香り。



「桜?興味がない。」


「…そうだろうな。」


わらわは瞳を閉じる。

この男は、自分が興味を持ったもの以外は全て無関心だ。


それがたとえ、他者にとってどれほど大切だろうが、どれほど守りたいものであろうが…

この男は簡単に踏み躙り、潰していくだろう…

まるで、地面を這う蟻を踏み付けるように…


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