短編集

□華
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“妖魔の王の第一の寵妃”

それは全ての妖魔にとって敬うべき存在であり、同時に畏怖をする対象でもある。


他の99人の寵妃からすれば、わらわの地位は羨ましい…というものなのだろうか?




だが、わらわは……



「わらわは桜が好きじゃ。お前の薔薇よりも…ずっと…ずっと、な。」




ああ…一体いつ頃からだろう…

口付けをするたびに…この男の腕に抱かれるたびに…

苦しさと痛みを感じるようになったのは…。



「……。」


お前は知らぬだろう?
夜明けを待つ事がどれほどつらいか。

…待つことがどれほど苦しいかを。




「覚えているか?あの時も桜が咲いていたことを。」

「知らん。」


…フッ、と思わず顔に出るのは自重の笑み。

ああ…そうだろう。わらわとて、お前が覚えているとは思っていない。


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