短編集

□墓碑銘
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「あーっ!零!!来てたの!?お願い、かくまって!
あの鬼教官に追われてるの!」


後ろを振り返ると、そこにはこの世界の新しい女王の姿があった。

…どうやら予想は当たっていたらしい。



オルロワージュが倒れた後、この世界は…妖魔達は新しい王を求めた。

新たな柱を求めたのだ。

妖魔の王に求められるのは、血統…その身に流れる血のみ。

いや…その血の流れこそが重要であるのだが…

だから、この娘が選ばれたのはある意味当然ではある。


王を討ち破った革命の娘。
そして…王の唯一の娘。


たとえオルロワージュの血が半分しか流れていない半妖だとしても、その覇王の血が流れていることには変わりがない。

もちろん、それを気に入らなく思っている者もいるらしいが。



「なんじゃ、アセルス?今日は何をやらかした。」

麗しの君。

革命の乙女。

…そう呼ぶ者もいる。

でも、この娘にはそのような名前は無用だろう。

なぜなら、“自分が自分であるために”お前と刄を交えたのだから。



「久しぶりにエミリアやリュート達に会いに行こうと思ったんだ。
そうしたら、ゾズマがいきなり現われて…『だったら、僕がアセルスをエスコートするよ。』とか言い出してさ。
…それをイルドゥンに聞かれちゃって…」


…なるほど…


「酷いよね!友達に会いに行くだけなのに!
『お前は自分の立場を分かっているのか!!』って、眉間にこーんなに皺寄せてさー!
おまけにゾズマはクスクスずーーーーーっと笑ってるし!」

と、自分の眉間に大げさに皺を作ってみせながら、わらわに話すアセルスがあまりにおかしくて…



「フフッ…そうか。」


「あー、零までゾズマみたいに笑うー!!」


「あやつも大変じゃの。相手がこれでは、な。」


「えっ?零、何?それ?」


意味がわからないというように首を傾げるアセルス。

…ここまで鈍いとは…ある意味才能だろう。


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