短編集

□虹
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「そう言えば、今日はすごい雨だね。天の底が抜けたみたいだ。」


私が投げ付けた本を片手にゾズマはその目を窓の外へと移した。

自然とゾズマの視線を追うように私の視線も自然と窓の方へと向かう。

ゾズマの言う通り、今日はザーザーとひっきりなしに空から水が落ちてきていた。


…雨か…私は…



「私は、雨、嫌いじゃないよ。」



へえ…珍しいねとゾズマが一言もらす。

うん、普通は苦手な人が多いもんね…


「だって、雨の音ってなぜか落ち着くでしょ?それに…」


「それに?」


「フフ…ゾズマには教えないよー」



何だよ、それ。っとゾズマの口から抗議の言葉が漏れる。
不機嫌そうなゾズマの様子が珍しくて、でも、おかしくって…自然と笑顔が出てきた。


「ふーん。まあ、君がそういう時って絶対に教えてくれないしね。今日はあきらめるよ。
そうそう、イルドゥンの姿を見なかったけど今日はどうしたんだい?
僕としては、イルドゥンの不機嫌そうな顔を見なくちゃ、ここに来た意味が半分なくなるんだけど?」


「…半分って…
…イルドゥン今日、用事があるって言って出かけちゃったよ。」


「この雨の中?」


「うーん…イルドゥンが出かけたのは朝だったから。ほら、朝は雨が降ってないでしょ?…あっ?」


朝は雨が降ってなかったよね…ってことは…


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