短編集
□ラベンダー
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「夢……なの…?」
夢…今のは夢?
「コッチが夢ならばよかったのに…」
誰に言うわけでもなく、そう一言呟いて机の上に置いてある水差しから水を飲んだ。
喉のヒリヒリとした渇きが徐々に薄れていくのが自分でも分かる。
でも、心はどこか渇いたまま。
私は、自分の部屋の窓をそっと開けた。
眼下にはどこまでも続く青薔薇の庭。空には虚ろに広がる紫紺の闇。
…私の大っ嫌いな世界があった。
「…もう少しで夜明けかな…夢のせいで早く起きちゃった。」
夜明けといってもここでは眩しい光がさすわけじゃなくて、空の紫色が少し薄くなるだけだけどね。
私が起きてから一ヵ月…この一ヵ月で私の世界はガラリと変わってしまった。
起きたら知らない世界で、まわりも知らない人ばかり。
そして…
―…お前はもはや人間ではない…―
「ッ!違う!私は…私はそんなんじゃない!!」
そこまで考えて、慌てて思考をブッツリと切った。
さっき水を飲んだばかりなのに、もう喉の奥がヒリヒリとしている。
違う、違う!!私は化け物なんかじゃない!!
部屋の鏡に写る私の姿は…とても痛々しかった。
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