短編集

□その意味
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「ったく…リオファネス城ってところはまだなのかよ?」


「…この先、二つの丘を過ぎたらもう見えてくると思う。」


「そっか…。まあ、さ、うまく言えないけどそんな顔すんなって。
今からそんなんだとあっちに着いてから体が持たないぞ?」


「…ありがとう、ムスタディオ。でも、私なら平気よ。
…早く…早く…兄さん達を止めなければ…」



視界の端から風にのって、ムスタディオとラファの声が僕の耳に届く。

そんな二人の話を横で聞きながら、僕は静かに目を閉じた。




リオファネス城

フォボハムの統治者・バリンテン大公の本拠地であるその城を目指し、僕達は進んでいる。

バリンテン大公はフォボハム一帯を領地として有している大貴族の一人だ。

大公は武人ではないため、先の五十年戦争で前線に立つ事はなかったのだが、大公の元には様々な国から集められた傭兵部隊があり、その部隊は大公の名代として活躍をしたそうだ。

そのため、大公の存在は、王室にとってもグレバドス教会にとっても蔑ろに出来るようなものではなく、その影響力の大きさはこの大陸の中でも屈指のものである。

又、大公は戦争で両親を亡くし、戦災孤児になった者達を集め、保護をしている慈善家としてもその名を馳せていた。

…もっとも…


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