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□そんな世の中を壊したのは君
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「爺、喉が渇いたわ。ハーブティーを」


「畏まりました」


この世は全て私(わたくし)のもの


「あの髪飾り…綺麗ね…婆や、あれ欲しいわ」


「わかりました、婆が身繕いましょう」


欲しい物は3分で手に入れる

人の心もそう


「(…この子、なかなかですわね…)こんにちは、良かったら私と踊っていただけないかしら?」


「ひ…姫様っっ…僕なんかで宜しかったらっっ」


この世は全て私の物

手に掴めないものは無いわ


…そう思っていた


「爺?…何処なの?」


ある日、私が散歩から帰ると屋敷が散らばっていた


「婆や?…やだ、このドレス…血だらけじゃないっ…」


血だらけ…?


血 だ ら け ?


よく見たらベッドにも血がついていた

その横に横たわっているのは父の骸


「イヤァァァァァァァァァアアア」


声にならない叫び声をあげて逃げ回った

でも、どこに逃げても使用人の骸



忘れなきゃ…忘れなきゃ…

私、母の首が落ちていたのなんて見ていないわ…!


やっとの思いで自分の部屋につく

躊躇いもなく扉を開けた



「やぁ、待ってたよ」


中にはニコニコした男性が私のベッドの上に座っていた


「貴方…逃げなくてよろしいの…?」


「うん…俺がみんな殺しちゃったんだからね」


男性は答える


私はもう立ってはいられなかった


私はシヌ


震えても涙を流しても男性は笑顔を止めない


「…?大丈夫だよ、俺は君を待っていたんだ…」


「わ…わたくしを?」


「うん、君のことは殺さないよ」


「どうして…父や母を殺したの…」


「君の為だ」


この人は何を言っているのかしら

「私の為になるわけないじゃない!!」


「そうデモしないと、君は一生過保護だ」


何故…過保護じゃいけないの?

私は欲しい物ならすぐに手に入る生活を好んでいたわ

なのに何故


「…解ってないな…君は何でも物が手に入るんだよね」


「でも、それで大事な者を守れた?」


父様…母様…


「君はもう姫じゃない。姫と言う肩書きの欲情女だ」


欲情…


「君一人で何か出来るのかい?」


出来ない…私一人じゃ…何も…


「居場所がないなら作ってあげるよ、だからこっちにおいで?」


この先私はこの男性に服従するんだろう

何故彼は私をここまでするのか…よくわからない


けれど、彼は私を新しくしてくれた

その心に私はいつまでも貴方に忠誠心を捧げましょう



この世は私の物

欲しい物は3分で手に入るわ

人の心も手に入る




           

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