オヤジ

□爆走ランデブー 〜再会〜
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「グハッ!ガッァ…。」

骨が軋み名前も知らねえ男は地に沈む。俺はそれを見下す。

つまらない…。

その一言に尽きる…。別に喧嘩が嫌いな訳じゃねぇ。むしろ好きだ…だけど、何かが足りない。

「流さん?どうしたっすか?」
「あん?なにがだよ。」
「なにがって…今日、上の空っすよ?なんかありました?」
「別になんでもねぇよ。」

話もそこそこに襠田はバイクに跨(またが)り、エンジンを蒸(ふ)かす。

「んじゃぁ俺、帰っからあとよろしく。」

一言だけ言うと、バイクを走らせる。しばらくバイクで走っていると行きつけのコンビニの前で男ふたりが言い争いをしている。

(あ?なんだ?ホモ同士の痴話喧嘩か?)

襠田は、遠くにバイクを止め冷やかし目的で痴話喧嘩の仲裁に入ろうとした…のだが、痴話喧嘩をしているふたりはどうやら恋人同士ではなく片方が一方的に好意を押しつけている様だった。

「はなせっ!!私には男色の気はないっ!!」
「いいじゃん。気持ちよくするからさ?オレと付き合ってよ。」
「だいたい君は誰だ!?」
「ひでぇな…。あんたはオレを助けたじゃねぇか。」
「は…?助けた?」

まさかと思った…。そんなはずは無いと…。
でも、少しの期待を胸に抱かせ腕を捕まれている相手方の顔を目を凝らし、見る。
息が止まった。いや、呼吸する事を忘れたのだ。

あのおっさんだ…!?

嬉しさ反面苛立ち反面。
腕を掴んでいる野郎は、おそらく先日の小物だろう。
俺は我慢出来ず、未だに言い争いをしているふたりの元へ走っていく。

「なぁいいだっぐぁっ!?」

「だっ誰だっ!、…襠田!」

振り上げた拳が見事に小物にクリーンヒットし、小物は盛大に飛んだ。

「…ちっ、浅かったか。」

襠田は、無表情に男を見る。男は襠田から漂う冷ややかなオーラに怯(ひる)む。

「なっなんだよ!「てめぇは消えろ……。」っ!くそっ!」

男は、襠田の一喝に完全に負かされ足早に去っていった。

「さて……と。おっさん、平気か。」

くるりと後ろを向くと、放心状態のおっさんが立っていた。

「ぶふっ!?」

俺はあまりのマヌケさに思わず噴いてしまった。

「ぶくく…おっさん、マヌケ過ぎ。」
「うえっ?あっ…あぁすまない。」
「いや…気にすんなよ。」
「そう言えばボウズ…。この前にも会ったな。」

おっさんは、そう言うとふわりと笑った。

「っ!?(かわっ…///)」
「?どうかしたか?…えっと。」
「襠田…襠田、流だ。流でいい。」
「流か…。私は城崎、城崎柚。よろしく」


城崎柚…。

何回も何回も頭の中でおっさんの名前を繰り返し呼ぶ…。

「ふーん…。よろしく、おっさん?」
「おっさんじゃありませんー。それじゃぁな。」
「あっ…。」

"待ってくれ"
思わず言いそうになった。でも言えるわけがない…。

「おっと…忘れてた。流、お前…族入ってるだろ?」

ピタリと止まり、オレの方を向く。

「…まぁ。」

流は、またかと思った。流は巨大勢力をもつ暴走族 "雷斬"(らいきり)の総長だ。
雷斬と聞くだけで小物どもは震え上がる。
常識だけの大人は止めろ、将来を考えろ。と五月蝿い…






























あんたも、常識だけの大人なのか?


でも…違った

「私の店にチームで遊びに来るといい。ジュースだがサービスしてやろう。」

じゃぁ。と言って去っていった城崎をいつまでも見つめていた。

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