オヤジ
□下弦の月
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会社からでた最後通告。
なんてこった!何十年も勤め、尽くしてきた会社をリストラされるなんて!
「だーぁっ!くそっ!」
近くにあったゴミバケツを蹴り上げる。
欠勤、遅刻を一切しなかった俺こと『田島健吾』は、ひとり、繁華街を彷徨っていた。
こんな時、普通なら家族の今後を心配するが俺にはそんなもンは無い。
両親は、健在だが音信不通。結婚はしていないので子供も居ない。
俺はひとりだ…。
いつかしよう。と考えてはいたが、年月は過ぎに過ぎ…今年で俺は46になった。
誰から見ても、婚期を逃しまくったおっさんだ。
「いっそ、違う世界に飛びてぇなぁ…。」
ボソリと呟いた言葉。
その瞬間、世界が真っ暗になった。
「なっ!ななななな何!停電かっ!」
急な事に驚き、トンチンカンな事を言う。
待て待て待て!落ち着け俺!停電はありえんだろ!
「おい…。」
「ぎゃああああああっ!」
暗闇から突然、声をかけられ後ろに後退りながら、人生数回目の叫び声を上げた。
辺りをよく見ると、暗闇がいつの間にか落ち着いた雰囲気の書斎に変わっていた。
何故に…?
いや、それよりも!目の前に居る金髪少年は誰だ?
「あの〜…、どなた様でしょうか。」
オドオドとした態度をする俺を、眉間に皺を寄せ睨む少年。
怖いぞ…。
「貴様こそ何者だ。僕の部屋で何をしている。貴様…暗殺者か。」
「暗…殺者?誰が?俺?」
訳がわからない。