オヤジ

□ナナシのはなし
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名前?そんなもん母ちゃんの腹に忘れたさ。
オレはナナシ。名無しなのさ。
名前なんて、個人を縛り付ける呪詛(じゅそ)なんだぜ?
オレはそんなのいらねーや。



「で?オメェに名前はねぇってか?ふざけてんのか…。」
「ふざけてねぇさ。自慢じゃねぇがオレは生まれてこの方嘘なんてついた事ねぇよ。」

にしし

歯を見せ、悪戯をした子供の様に笑う

「…は、仮にその話が本当だとして俺の島で勝手した事は変わりねぇよなぁ?」

押さえつけられているナナシに近づく、ボサボサな髪を掴み上げる。

「っ…いっ!」
「あぁ゛!!どうなんだよ!!」

ナナシは頭皮の痛みに悲鳴を上げる。しかし男はそんな事などお構いなし。

(若いな…。23くらいか?)

痛みで顔を引きつりながらもナナシはそんな事を考えていた。
「おいっ!!聞いてんのか!!」
「聞いてるよ〜。君、名前なんて言うの?」
「あ?俺をしらねぇーのか?」

男はきょとんとオレを見る。頭を掴んだまま…

「おじさん、世間様とは仲良くないもんでね。」

いい加減、頭をはなして欲しくて掴んでいる手を払った。
頭から手が離れ、体制が崩れた

「ちっ…。青竜会 若頭、久保田佐紀だ。」
「佐紀くんか。佐紀くんは年いくつ?」
「25…。それが何だよ。」
「あっやっぱりわけぇな。」

うんうんと自己完結し頷く。

「てめぇ!!おちょくってんのか!!」
「会話に漢字がねぇぞ。佐紀くん?」

クスクス、くすくす

まぁまぁ若いの話をしようじゃぁないか?
そんなに叫んでちゃぁ頭の血管切れちまうぜ?

両手を広げ、演説するかのように久保田に問う。

「佐紀くんよ…。頭の悪いふりは疲れねぇかい?」

「俺を、そばに置けばそんな疲れもおさらば出来る…。なんてったって…俺は」

なんてったって俺は、ナナシ。
名の無い家無きおっさん。

名をくれた者に忠実に。

名をくれた者に忠誠を。

俺はナナシ。あんたに忠実な犬さ。

「佐紀くんを狙うもんは壊してやるさ。」

さぁ…、ご主人様。
犬には名前が必要だ…。仮初の名を…。

俺はナナシ。名無しなのさ。
縛られるのが嫌いなんだよ。だから、名前を捨てたのさ。

「…ふん、いいだろう。拾ってやる。」
「ありがたいねぇ。じゃぁ名前をおくれ?」
「あ?お前の名前はナナシだろ?」
「………あっはははは!!!そう言えばそうだったかねぇ。」



俺はナナシ。名が無いのが俺の名前さ。






end

ぉまけ

久「ところでお前いくつだ?」
ナ「いくつに見える?」
久「……28か?」
ナ「おっ!まだ、通用するか。」
久「いくつだよ…。」
ナ「39。あと一年でアラフォーの仲間入り」
久「………(嘘だろ。)」
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