□ありふれた幸せ
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今日は、好きな人に会いに行く。
胸が高鳴って、赤面してしまうんじゃ無いかってくらい血が廻る
知らぬ間に、歩く速度が早くなる
早く会いたい。会って、話したい

「ねぇ〜、長谷川さーん?機嫌直してよー。」
「だったら、離れてよ。暑い。」

汗をだらだら流しながら、オレに抱きつかれて、ぐったりしてる
汗ばんだ額に、ぺったりと髪が張りつき頬は紅潮し艶っぽい。

「んー、一緒に遊び行ってくれたら離れるよ。」
「えー…、例えばどこに?」

端から見たら、暑苦しい光景でも、オレにとっては幸せな一時だ。

どこへだって、長谷川さんと一緒なら行く
好きな人とは、いつだって一緒に居たいと思うのは普通だろ?

「長谷川さんと一緒に居られる場所。」

どこだっていいんだ。
パチンコ屋でも、公園のベンチでも、
ありふれた場所でも、どこでも
長谷川さんの隣が俺の居場所だから。

「それじゃぁ決まらないよ…。」

眉をハの字にし、呆れ顔をした長谷川さん

どうやら、オレが思っていた事は伝わらなかったみたいだ。
仕方ないよな…長谷川さん鈍いから。

「じゃぁ、このままだね。」
「っひゃ!」

猫のように、頭を長谷川さんの首もとに擦り付け、首筋を少し舐めてみた。
そしたら、甘い声が出た。

顔をちょっと上げて、長谷川さんを盗み見たら茹で蛸みたいに真っ赤だった。
加虐心がむくむくと煽られて、もっとしたくなったけど今は我慢。

これ以上したら、また機嫌が悪くなって相手にしてくれなくなる。
今までに学んだ事だ。

「夏だねぇ…。長谷川さん。」
「そうだね…、だから早く離れろ。」
「海いきたいねぇ。」
「無視か!丸無視か! 」

失礼だなあ…。ちゃんと聞いてるよ。
そんなことを思いながら、外の音に耳を傾ける。
セミが、短い命を精一杯生きるため力強く鳴く音
それから、夏休みを満喫してる子供の無邪気な笑い声と走り去る足音

特別な事じゃない、ただ普通の日々
その中にある、ありふれた幸せ

好きな人と毎日を笑って過ごす。
これも、ありふれた幸せのひとつ。

居場所が存在する安心感
それも幸せ?

分からないけど、分からないからこそ幸せを感じられるんだと思う。
どんなに小さくても、どんなにショボくても、幸せを感じられる人が必ず居る


ありふれた幸せは、

自分が思ってるよりも

近くにあって、知らぬ間に起こってるのかも知れない。






そう思えるのも、隣に移動してしまった照れやな愛しい恋人のおかげかも知れないと思った8月。




end

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