銀
□純愛横恋慕
2ページ/7ページ
「フフフフ…っやっと、やっと手に入れたぞ…っ!」
やっほう、俺ヅラっち☆(*桂裏声)
日々長谷川泰三という男に絶賛片思い中の男だ。
何故マダっちが俺に振り向かないのか。
それもこれも、全てあの銀髪もじゃ頭のせいである。
俺が正々堂々と横恋慕をしようとしているにも関わらず、
銀時はその邪魔をする。
蹴ったり殴ったり、この間なんか鼻フックをされたぞ。
相当機嫌が悪い時なんかは膝飛び蹴りをされることがある。
正直きつい。アレは痛い、鼻血が出た。
まぁそれはさておき。
まるでアンパンマンを倒そうとするバイキンマンの如く、俺はめげずに毎日毎日マダっちを手に入れるため横恋慕をしてきた。
そして、今日それが実を結ぼうとしている。
何故かって??
そう、よくぞ聞いてくれた!!!
今日俺はマダっちと会う約束をしている。
銀時の目を盗んでやっとこさ約束を取り付けたのだ。
マダっちに会い、お茶をした際
俺が今手に持っているこの薬をマダっちの茶にさり気なく注ぎ込み、
マダっちをトロットロのメロッメロにしてウフンアハンなことをする予定なのだ!!!
そしてソレは現実になる!!!
さぁ待っててねマダっち!!今ヅラっちが行くよぉぉぉぉ!!!!!www
「なにしてンだコラ」
「あタプンっッッ!!!!!!?」
突然の顔面への痛み。
ズザザザザザ、とかなり飛ばされる。
そしてふてぶてしい聞き慣れた嫌な声。
そう、それは今一番俺が聞きたくない声だった。
痛む顔面を手で抑え、涙目で相手を見上げた。
そこには
恐ろしいぐらいの羅刹のような表情で仁王立ちする、
かつての戦友であり今も別の意味で戦友である坂田銀時が立っていた。
「オイコラ聞いてンのか。なにしようとしてたンだって聞いてンだよ。」
「ふ、フンッ、そんなの貴様に関係ないだろうっ!」
「関係大アリだ馬鹿野郎。俺が長谷川さんの恋人である限りテメェが長谷川さんにしでかすことは全て俺に関係あんだよコラ」
「フハハ!!なにを血迷ったことを!!そんな夢物語りは残念だが今日までだッ、今日から長谷川さんは俺のものになるのだフハハ!!!」
「フハハてなんだよいつもの100倍腹立つなコノヤロー。」
「何度でも言うが良い。今日の俺は素敵に無敵、スペシャルなアイテムを持っているのだからな!!」
「ぁ??アイテムって…コレのことか??」
「そうその小袋に入ってる素敵な薬……ってエエエエエエエエ!!!!!!!!!?!!」
ひょい、と当たり前のように銀時が摘んで俺に見せたのは、
先程まで俺が持っていたはずの素敵な薬。
俺は慌てて懐を探ったりして自分の手に持っているはずの薬を確認しようとするが、
…あるはずがなく。
ということは、目の前のこの男が持っているのが、俺がさっきまで持っていた薬だと言うことになる。
「な、な、き、貴様いつのまに…っッ!」
「ぁぁ。さっきスった」
「スっただと!!?貴様武士の風上にもおけぬ奴!!人間として恥ずかしくないのか…!!?」
「人様の恋路を邪魔しようと横恋慕を働き、その上で人様の大事な恋人に怪しい薬飲まして自分のもんにしてやらしいことしようとした奴に言われたくねェな。その言葉金棒で打ち返してやるよ。」
「怪しい薬ではない!!!その薬はな、いわば惚れ薬のような媚薬なのだ!!!決して怪しくはないぞ!!!」
「純度100%で怪しい薬じゃねェかよコノヤロー。ンな薬を俺の長谷川さんに盛ろうとしてたのかテメッ、つーか、へぇー…そうなの。コレ、そんな薬なんだ。」
元々俺の所有物だった薬をひらひらと振りながらじぃー、と眺める銀時。
その銀時の顔が、ニヤリ、と人の悪い笑みになった時
俺はヤバいと思った。
そう、こいつは1度自分の手中に収めたものを、人様に返す等という器用な芸当をしたためしが、
今までに一度足りともない。
それが自分にとって都合の良いものならば、尚更である。
「ぉ、おい銀時、貴様まさか…っ!」
「ぁーー、コホンホン。真選組の皆さぁーんっ!!こんなところに攘夷志士の暁『狂乱の貴公子』桂小太郎がいますよぉーっっ!!!」
「貴様ァァァァァァァ!!!!!!!!!!友を売るとはどういう了見だァァァァァァァ!!!!!」
「俺にゃァ人様の恋人を横取りするような友はいませぇーん。」
「お、お、覚えてろォォォォォォォォ!!!!!!!」
軽く咳払いをした後、
銀時が後ろに向かって大声で叫ぶ。
すると、何処から湧いてきたのか、真選組の連中がズドドドド!!と土埃を湧き立たせながら走ってきた。
俺は涙目になりながら、お決まりの悪役台詞を吐いて、懐に忍ばせておいたンまい棒を爆発させ逃げる。
長谷川さん!!
また、またの機会にデートしましょう…!!!
その時までにはまた新しい素敵な薬を用意しておきますからぁぁぁぁ!!!!!!
.