□純愛横恋慕
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「…あいつ、馬鹿だねぇ…」

「ヅラっちぃーっ!おまたせぇーっ♪…て、アレ?」

「ん。ぁぁ、長谷川さん」

「ぇ、なんで銀さんがいんの?ヅラっちは??」

「ヅラなら用事出来たとかで帰ったぜ?攘夷志士なんだし。忙しいンじゃねェの??」

「そっかぁー…ヅラっちも大変なんだなぁ…」







ヅラが去って行ったであろうな方向を見つめながら、

俺は溜め息を吐く。

すると、後ろから俺の愛おしい天使ちゃんの声が聞こえてきた。

俺はなにくわぬ顔で嘘を言うと、長谷川さんは、仕方ないね、と言ったふ風に溜め息を吐いた。








「…ねぇ長谷川さん」

「なに??」

「折角だし、俺とお茶しない??万事屋おいでよ」

「ぇ。いいの?」

「もちろん。神楽も新八も今お妙のトコ行ってていねェンだけどね。」

「へぇー…そっかぁ。じゃぁ、お邪魔しちゃおうかな。万事屋だったら金かからねェし」

「オッケ、じゃぁ行こ??」









うん、とニッコリ微笑む長谷川さんに、

俺は天使の微笑みを向ける。

しかし、内では悪魔も逃げ出すような微笑みを浮かべながら…


そんな俺の心中も知らずに、

長谷川さんは俺に黙って着いてくる。

そして、俺等は万事屋へと赴いた。
























ガラララッ









「たでぇーまぁー」

「って、誰もいないじゃん銀さん;」

「ぁ?ンなのノリだよ。ノリ」

「そういうもん?虚しくね??」

「良いンだって、そういうのは自覚したら負けだよ長谷川さん」

「…そなの…」








誰もいない万事屋のドアを、ガララ、と開ける。

ただいまと言っても、案の定返事はなく。

玄関にも靴は一足もなかった。

俺はそれを眺めた後、自分のブーツを脱ぎ、中へと入る。

それに続いて、長谷川さんも下駄を脱いで中へと入ってきた。



入るなり、そこらへん座ってて、とソファを俺が指差すと、

じゃぁ遠慮なく、と言ってソファに座る長谷川さん。

何度も万事屋を訪れている長谷川さんにとっちゃ、此処はもはや第2の家だ。

そして、将来の俺と長谷川さんのスウィートホームになる予定だ。




ソファに座った長谷川さんを確認すると、

俺は台所へと消える。

棚の中にあったほうじ茶を出して、コポコポとお湯と共にきゅうすに入れた。

そして、手頃な湯のみを出して、ソレに出来立てのほうじ茶を注ぎ込む。


そこで、ヅラから奪い取ったあの薬を懐から取り出した。

なんのことはない、ただの銀色のパッケージの小袋。

まるで市販で売られている風邪薬のようだ。

ペリリ、と包装紙を破り、匂いを嗅いでみる。

無臭だった。

きっと多分、無味無臭のものなんだろう。

…なんともまぁ、ご親切な薬だこって。


色も普通に白色で、

俺はそれを長谷川さんの飲む湯のみの中にサラサラと流し入れる。

それは砂糖のようにすぐにお茶の中に溶け込み、

なんら違和感ないものになった。

ホントにこんなものが効くのだろうか??

…つーかヅラが持ってたものだしなぁ。

なんか、外れの可能性のが高そうだ。






それに









『惚れ薬』









と、ヅラは言っていた。



俺と長谷川さんは相思相愛でラブラブだ。

喧嘩もするけど、すぐに仲直りするし。

そんな俺等が、『惚れ薬』なんてものを使ったらどうなるのか??

相手が自分のことを嫌いな場合だったら、

きっとコレを飲んだ瞬間自分にメロメロになって好きになってくれるんだろう。

けれど、長谷川さんは俺のこと好きだし。

……まぁ、ツンデレのツンの部分が多くて照れ屋さんなところがあるからなかなか甘えたり素直になってくれたりはしないけども……

正直どうなるかは予想も付かない。

ま。ヅラが用意したやつだ。

パチもんの可能性のが高いし、当たってたとしても、きっと効力は短いだろう。

それに、むかつくが、ヅラは長谷川さんにゾッコンラブ(死語)だ。

そんなヅラが、長谷川さんに危険なものを飲ませたりはしないだろうから。








そう思いながら、

俺は2つの湯のみを持って、長谷川さんの待つリビングへと足を向けた。





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