銀
□危険信号
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さぁ…逃げろ───
鬼は俺。
決して捕まってはいけない…
捕まったら最後…二度と外には出さないから。
危険信号
「ゲームをしないか?」
そう男は言った。口元を吊り上げて笑いながら楽しそうに────。
「なに…ルールは至極簡単さ。お前はただ…、逃げればいい…俺から、鬼からな。」
嗚呼…、逃げなければ…。
頭の中で危険信号が出る。
逃げろ…───
ニゲロ…─────
人に当たろうがゴミ箱にぶつかろうが、そんなものを気にしている余裕は無い…
今は何が何でも逃げなければ…!!
「っ…はぁはぁ。もっ、大丈夫…かな?」
肩で息をしながら、物陰に隠れ息を潜めた。
辺りは暗く、自分の吐く息だけが耳に届く。
心臓が破裂するかのように速く脈打つ。
ざりざり…──
草履が地面を擦る音──!
来るっ───!?
体が、ガタガタと震える。恐怖が全てを支配する…。
ざりざり…
ざりざり…
(来るなよ…来るなっ来るなっ!!)
ぎゅっと目を閉じ、恐怖が過ぎるのを待つ───。
ざりざり…
ざっ…
足音が消え、しん、と静まり返る。
(…居なくなった…のか?)
ざり…───
「長谷川…──みぃつけた。」
「ひっ…──
たっ高杉。」
振り向けない…──。嫌、違う…高杉の白く、冷たい手が後ろから俺の頭を押さえているのだ…。
「クックックッ…。長谷川…そんなに震えて、ほんと…かわいい奴。」
ゾクリとする低音の声。
嗚呼…逃げたいのに体が動かない。
鬼が笑う…─。至極、楽しそうに…。
「くっくっ…ほんと、飽きねえなぁ。…長谷川。」
「んんっ!!…んふっ。(ゴクン)」
長谷川は、遠のく意識の中で見たことも無いような優しい微笑みを浮かべる高杉を見たのだった…。
「…やっと、手に入れた。愛してんぜ…長谷川。」
逃げて
逃げて
捕まった────
もう…逃げられない。