Project M  
"1st mission"




茹だるような暑さの中、蝉の声がただ煩い。
そんな声を掻き消すように一人の男が口を開いた。

「…今日お前らに集まってもらったのは他でもない」

真選組屯所に集結している一同。
なんとも汗臭い…いや、男気溢れる光景だ。

「まずは各自、配られている紙を見てほしい」

一同は真選組副長の男、土方の言うとおりに手元の紙に目をやる。

そこには色とりどりの写真が掲載され、


『軽ビー 薄揚げ芋 100円!!』

『根ピア ティッシュペーパー 245円!!』


等と書かれている。
そこに一際目立つように、赤ペンで囲まれている箇所があった。
…恐らく土方自らが書いたのだろう。




『QPマヨネーズ 100円!!』







「…」


蝉の声が煩い。



「見てのとおり、大江戸スーパーの広告だ。
 しかし、ここで注目してほしいのは下の注意書きだ!」



よく見ると、商品の下のほうに申し訳程度に書かれている文字が。



『※お一人様一本限り』



「…」


バンッ!

土方の声が蝉を黙らせる。


「これは一人一本しか購入できないっ!!!!」


一同も黙る。


「そこで俺はこの忌々しき事態を打開すべく、作戦をいくつか考えた…」


何処からともなく黒板が現れる。
そこには黄色いチョークでアンダーラインを引かれた文字が、これでもかというほど大きく書かれていた。


「これを総じて『プロジェクトM』と名づけた!」

「…あのぅ…」


勇気を振り絞り…いや、率直に何も考えずに口を開いたのは監察の山崎だ。


「『プロジェクトM』の『M』って…」

「もちろんマヨネーズ(Mayonnaise)の『M』だ!!」


マヨネーズがワンコインで買える時代が来るなんて…と呟きどこか別の次元へタイムスリップしている土方。
これが鬼の副長、なんて言われているのだからこの江戸も変だ。


「…そこで、お前らの力を貸してほ…

し…

…い…」


台詞がなぜ言い切られなかったのか。
それは言う相手がいなくなっていたからである。


「フンッ!フンッ!」


庭に先ほどの率直な男がいた。


「山崎…他のやつらはどうした…?」

「皆っ…仕事がっ…忙しいとの事でっ…戻りましたっ!!」


…屯所に再び、蝉の声が響く。





『プロジェクトM

作戦1
 "皆で行けばこわくない"

―――失敗。』


※土方丸秘帖より抜粋







continues.


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